北朝鮮代表は、よく鍛えられたチームだった。ま、北朝鮮が「脅威」なのは今に始まったことではないわけだが。
序盤は国際舞台での経験の少なさが出てミスが多かった。だが中沢が「相手の勢いに押されて後手後手になってしまった」と話したように、徐々に選手個々の強さを発揮し始め、日本選手も1対1の局面でボールを奪われ始めた。
61分にはナム・ソンチョルがペナルティーエリアの外から強烈な同点ゴール。身体能力の高さを見せつけた。意表をつくパスを出すような選手はおらず、自陣深くからでも細かくパスをつなごうとしてピンチを招く場面もあった。戦術的な成熟度は感じなかったが、常に攻守のバランスを保とうという意識は高かった。
日本が狙ったサイド攻撃への対応もできていた。日本の左サイドの三都主にはリ・ハンジェら2人が対応。逆に日本の右サイドには、攻撃的なナム・ソンチョルを前半終了間際に投入して加地の動きをけん制し、「攻撃が最大の防御」というユン・ジョンス監督の言葉通りの効果を生んでいた。
中村、高原を投入した日本の終盤の猛攻に、あまりに守備的になり、ロスタイムで力尽きたが、身体的、精神的な強さから生まれる運動量は、6月のアウエーでの対戦では、一層の脅威となりそうだ。
■当たり前のように勝つだろうと思われていたが、予期せぬ「好ゲーム」だった。いろんな意味を込めて、私は日本の勝利を喜んでいる。
■ゲーム自体を論じる専門的知識を私は有していないわけで、どこかで拾ってきたような「解説」をしてもしょうがないので、やめておく。となると、どうしてもその周辺部に対する感想ってことになっていくわけだが…
■「厳戒態勢」は肩透かしにあって、石原都知事も日本人の「民度」にさぞご満悦であろう。
■対北朝鮮感情が悪化している日本社会にとっては、ガス抜きにはなったのかもしれない。ま、逆に、もし負けていたらと考えると…在日の人々への醜い嫌がらせに、私は「民度」を疑うことになっただろうけども。
■テレビ朝日が政治的な報道をしたのは、先のアジアカップにおいて、政治問題化したことで高視聴率を獲得した成功体験に基づくものだ。おそらく今回もかなりの数字を出していることだろう…
【追記】北朝鮮戦の視聴率47・2% 関東地区(共同通信)
テレビ朝日系で9日午後7時すぎから中継放送されたサッカー2006年ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の日本−北朝鮮戦の平均視聴率は、関東地区で47・2%、関西地区で43・5%に達したことが10日、ビデオリサーチの調査で分かった。
瞬間最高視聴率は、試合終了時の午後9時22分ごろで、関東57・7%、関西55・6%だった。
■北朝鮮チームの「異質性」ばかりに焦点を当てて、テレビ朝日主導で政治をからめるキャンペーンがなされていた。「政治とスポーツは別ですから」と言いながらのダブルスタンダードには辟易とするものがあった。
■試合が近づくにつれ、二人の在日Jリーガー…アン・ヨンハッ(安英学)とリ・ハンジェ(李漢宰)への注目が、在日社会へと広がっていった。彼らを通じて、日本内部に存在する「在日」というコミュニティを日本人が確認できたことには、大きな意義が見出せるだろう。
■ま、それも勝ったからこそ言える余裕なのかもしれないけど。負けた場合、両選手に対する風当たりはさぞ強くなっていただろう。もし得点なんて決められた日には、「なんであんな奴にカネを払っているんだ!」と右翼まがいの嫌がらせが寄せられるかもしれない。
■両サポーターからは「友好」などという言葉も聞かれた。それは過分にメディアによって演出されたものであったとしても、大事にしたい流れではある。
■あとはアウェーか。北朝鮮側にも大人の対応を期待したい。ましてや、日本人がたっぷりと外貨を落としてやるんだから(対北強硬派からすれば、サポーターは「非国民」と映るんだろうな)。
■うるさい実況と無知っぷりで非常に不評な角澤照治アナ。で、例によって、最後の方は声をガラガラにしており、実に邪魔臭かった。喋れないならアナウンサーなんて辞めちまえなのです。
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