2003年12月28日日曜日

2003年総まくり

ずいぶんと時間がたっているんで、存在を忘れ去られているかと思いますが、4回目の配信です。
え〜っと、早いもんで、2003年も終わりですね。
この時期、恒例なのが「2003年ニュースランキング」みたいなのでして、これを僕もやってみよう…と思ったけど、自分でランキングしても偏りそうなんで、共同通信社の「2003年の内外10大ニュース」を使って他力本願。
まずは、『国内編』のランキング…
? 邦人外交官2人がイラクで殺害
? 衆院選で民主党躍進、与党は絶対安定多数で二大政党時代へ
? 長崎男児殺害など少年の重大事件相次ぐ
? 有事関連法が成立
? イラク復興支援特措法が成立、自衛隊派遣へ
? りそな銀行に公的資金投入、足利銀行は国有化
? 阪神タイガースが18年ぶりリーグ優勝
? 自民党総裁に小泉首相が再選、中曽根、宮沢両元首相が引退
? 松井秀喜選手が大リーグ・ヤンキースで活躍
? 個人情報保護法が成立、住基ネットが本格稼働
まぁ、妥当なとこかな。
 外交官の殺害が自衛隊派遣よりも上位にランクされるのはどうかと思うが、この悲劇が浮き彫りにしたものは大きい。イラクに派遣される自衛隊がいかなる危険にさらされるかが鮮明になった。その一方、派遣推進派は「遺志を受け継いでイラク派遣すべき」と主張した。ここで不思議に思ったのが、「遺志」を神聖化する必要があるのか、ということだ。
 たとえば、小渕恵三が「株あがれ〜」と野菜のカブを持ち上げたシーン。生前は「能天気なパフォーマンス」であったが、死後は「ユーモア」であり「気さくな人柄」である。
 さらには「遺志」をどう解釈するかという問題がある。たとえば、奥参事官は『外交フォーラム』の11月号において、「イラクの戦後復興における国連の役割」という論文を書き「イラクの暫定統治、憲法に基づいた政府の樹立には、なお相当のエネルギーが必要です。その重荷を米国と一部の連合参加国だけでは、いずれ背負い切れなくなるでしょう。その時、国連という機関の役割が必ずや大きくなってきます。」と語っている。この「遺志」を抽出することによって、戦後復興から独仏を排除するアメリカを非難して、国連中心の戦後復興を主張することもできる。
 イラク派遣において、自衛官の命やテロのリスクの増大ということも無視できないが、より注視すべきなのは、派遣推進派が先に描いているヴィジョンであり、戦争のできる「普通の国」になることである。これは「人道支援」「国際貢献」といった美名で片付けられるほど単純ではなくて、自衛隊と国家にとって、歴史的な「転換」である。
 ?は「民主党躍進」というが、実質的には社民党や共産党が減らした議席数を、「マニフェスト選挙」を喧伝して奪っただけである。僕にとって、この選挙で鮮明になったのは「二大政党制」ではなくて、「左派勢力衰退」であり、その象徴が土井たか子の辞任だ。民主・自由両党の賛成によって?があり、憲法改正への流れは確かなものになった。(多用すると陳腐な表現になるが)これもやはり「転換」であり、政治に関しては、2003年は「転換」の年であった。やや強引ではあるが、安倍晋三幹事長を含めてみれば、?もそう言えなくもない。
 それから「二大政党」ってのは公明党の存在を忘れてないか?今後、日本政治は公明党(創価学会)にキャスティング・ボードを握られるのだろうか。
 経済に関しては、依然として閉塞状況が続いており、「失われた10年」から続く「長期停滞」から抜け出せていない。「森総理の辞任が最大の株価対策」と言われた株価だが、辞任後もさらに下がり続け、今年、ついにバブル後最安値を記録した。注目を集めている年金改革であれ、道路公団民営化問題であれ、なんら打開策は見つかっていない状況だ。景気回復の兆しもなくはないが、地方経済の地盤沈下はより深刻なものになっている。
 ?に関して言えば、公的資金への感情的な反発はやはり強いようで、「税金の無駄遣いはやめろ」「失敗したのなら潰すべき」「民間企業でそうなっても誰も助けない」といった意見が出される。金融への理解が足りないだけ…と却下することも可能だが、この不条理への不満は正当なものだ。金融機関はシステミック・リスクを考慮して行動しない、その一方で、社会全体には金融破綻というコストがもたらされる。したがって、常に過度のリスクテーキングが…と、このまま暴走を続けても、食いつきがなさそうなので、シンプルでありがちな感想を…ってか、言葉不足なので、金融システムについて簡単に説明しなければいけないと思うと、その労力と時間を省きたくなったのである(汗)。
 経営者責任・株主責任を厳格にしろ! …以上。
 「転換」をキーワードにして、2003年を読み解こうとこころみたが、これ以上強引に続けても、しつこいだけなのであきらめた。これまで堅苦しい文章だったのを反省して、これからは軽いタッチで書く(端的に言って、手抜き)。
?「長崎男児殺害など少年の重大事件相次ぐ」って、そういえばありましたねぇ…
「長崎男児殺害事件 写真」で検索してくる人が増大した。隠されると見たくなんのかねぇ。2chでばら撒かれたんだっけか。不適切な社会的制裁というか、ネットの負の側面と言うか、プライバシーってのが守りにくくなってる。規制や法を整えたとしても限界があろうし。
 あと少年法改正論議ですか…象徴的な事件があると、すぐに感情的になってわめき散らす人がいるんだよね。「少年犯罪増加」って言説は本当かと疑う余地もあるし。少年犯罪が起こる度に毎回言ってないかい?
? 阪神タイガースが18年ぶりリーグ優勝
 世間的には「阪神の年」だったんでしょう。改めて言うのも恐縮してしまうが、タイガースには僕はうんざりした。各メディアっは、自分たちのイメージに合致する「熱狂的な阪神ファン」を垂れ流しており、非常に単純で画一的なものを繰り返し見るはめになったし。道頓堀ってのは、その象徴的な存在でありまして。危険ですから飛び込まないでください…と言っておきつつ、「阪神ファン」(あくまでもカッコつき)がバカ騒ぎしている映像を流して煽る。自分たちが道頓堀をメッカにしているという認識はあっても、メディア間の群衆行動が作用してやめられない。
 もう一つの傾向として、星野仙一を過大評価しているんじゃないか、と思わせる報道が目立った。野球ってのは、そんなに監督の裁量が効くスポーツではないと思うのだが。にしても…いい時期に「勇退」したと思いますよ。
? 松井秀喜選手が大リーグ・ヤンキースで活躍
 もーどうでもいいっす。そりゃ、がんばればいいじゃないっすか。僕としては、本人よりも松井パパ(松井昌雄)の愚行に興味がありますが。
【国際編】はもっと手を抜きます。
? 米英のイラク戦争、フセイン元大統領を拘束
→ここいらに関しては「お言葉を返すようですが…」というコーナーに書いたので、そちらを参照してください。
? 新型肺炎(SARS)が世界的流行、死者700人以上
→結局、何が原因だったのか、よくわからなかった。終息したと思ったら、最近また出てきたみたいだし。
? 北朝鮮が核開発表明、日米中韓などで6カ国協議
→アメリカの圧倒的な軍事力を前に瀬戸際外交を続けている将軍様。拉致問題は相変わらずだし、核問題や6カ国協議でも進展する目処はない。最近ではすっかり扱いが小さくなっているものの、ワイドショー的なものは根強い人気がある。たとえば、夕方のニュース番組では、北朝鮮のテレビ番組は欠かせなくて、人々はこれを「オカルト」として楽しんでいるようだ。
 平沢勝栄らに柔軟姿勢を見せてきたというが、信用はできないだろう。なにせ政府レベルの交渉ではないし、「日本は約束をやぶった」ってことになってるわけで、相手が居直る隙を与えている。五人を平壌に行かせるのは非常にリスクの高いギャンブルだ。
? イラク統治評議会が発足したがテロ続発で復興混迷
→アメリカがどの程度まで関与していくかが見物、ってか注視しないといけないだろう。あと、どういった利権の分配がなされた…とか。また世界的に反米感情が増すんだろうなぁ。
? 中国国家主席に胡錦濤氏選出、温家宝首相と胡−温体制がスタート
→中国の最大の課題は、政治体制だろう。民主化の流れは止められないんで、いかに政治改革を緩やかに進めるか。急速な経済成長を遂げる一方で、市場経済の負の側面である貧富の格差が急激に増大している。この矛盾をどうやって解決するのか。
 日本との外交関係で言えば、「新思考外交」ですかね。経済的利害関係を重視する一方で、国内には根強い反日感情がある。なんか微妙にバランスが取れている。
? 米スペースシャトル「コロンビア」が空中分解、乗員7人が死亡
→あんまり知らないんで、なんとも言えない。でも、莫大な費用を投じてまで宇宙開発したいんだろうか。持ち前の「フロンティア・スピリッツ」とか「帝国主義」だろうか。
? イラク対応で米国と欧州に亀裂、反戦の波が世界覆う
→ラムズフェルドの「古い欧州」「新しい欧州」ってのが象徴的かな。イラク戦争に強硬に反対するドイツ・フランスを「古い欧州」、ポーランドなどを「新しい欧州」って呼んだ。「古い欧州」って言葉は肯定的な意味を強めてきて、「古い欧州」は反戦活動家たちが誇りをもって掲げるスローガンにさえなっているとか。EU憲法草案のやり取りにもヨーロッパの対立が出てて、興味深いテーマではあるが。
? 中国が初の有人宇宙船打ち上げ、宇宙大国の仲間入り
→「大国」として誇る中国に対して、嫉妬したかどうかはわからないが、石原慎太郎は「あんなものは時代遅れ」と強がった。まぁ、軍備増強したり、こんなことやってる国にODAが必要かという疑問は当然だろう。為替相場や支援に関して突つかれると、中国は急に「途上国」として「謙虚」にふるまう。この厄介な「大国」とどう付き合っていくのかが対米外交と並ぶ課題だ。
? パレスチナ和平はテロと報復攻撃で足踏み
→コメントするのも嫌になる。いいかげん歴史に学べよ…とだけ。
? ジャカルタなどで爆弾テロ続発、東京にも警告
→自衛隊派遣によって、いつあってもおかしくはない状況にはなった。不幸にもテロがあった時、対応は別れるだろう。派遣推進派は「テロとの戦い」を強化しようとするだろうし、反対派は「そらみたことか!」と自衛隊派遣をした政府を非難するだろう。僕はもちろん後者だ…と言うまでもないか。
■「総まくり」と言ったわりには看板倒れなので(笑)、その他のトピックを…(思いつく限り)
・横綱貴乃花が引退(1月)
→「痛みに耐えてよくがんばった」結果、それがあだになって引退。
・「ラエリアン・ムーブメント」(1月)
→年初に世界を騒がせた「ラエリアン・ムーブメント」。クローン人間を製造したと主張した変な団体だ。結局、あれは何だったのか。だが、近い将来、クローン人間が誕生することになるのは間違いないし、すでに研究している者がいても不思議ではない。
・「韓国地下鉄火災」(2月)
→韓国・大邱市で地下鉄火災が発生し犠牲者は196人にものぼった…らしい。そう言えば、あったねぇ。どんなことを書いたか全く覚えてないので調べたら、この事件については何の言及もしてなかった(サーバが不調だったみたい)。韓国は高度成長を続けてきたが安全面を重視してこなかった、日本では考えられない、といった論調だった気がする。
・「白装束集団」(5月)
→「パナウェーブ研究所」だったっけ。「スカラー波」とかよりも、千乃裕子代表が「タマちゃんを助けてくださ〜い」と絶叫していた姿が印象的だった。いやぁ、あれは笑ったよ。
・「スーフリ」(6月)
→現役大学生のイベントサークル「スーパーフリー」で集団暴行事件発覚。「鬼畜」って言葉がピッタリ合う。「和田サン」というリーダーがパラパラ踊ってるとこは、非常にマヌケで印象的だった。
ちょっと前に引用したことがあってか、「強姦しても何にも罰せられんのやったら、オレらみんな強姦魔になってるやん。」(西村眞悟)という発言を思い出した。きっと同じメンタリティなんだろうなぁ…強姦しても罰せられない(スーパーフリー⇒超自由)と思ったから、強姦したんだろうか。「オレらみんな強姦魔になってるやん」…って、たのむから一緒にしないでくれ。
・「たばこ値上げ」(7月)
→タバコの有害性については言うまでもないが、取りやすいとこから取るって手法が汚いなぁ。タバコってのは国によって認可されているわけで、中毒にさせて税金を取るなんてねぇ。
・「名古屋ビル爆発」(9月)
→運送業“軽急便”に男が押し入りガソリンを撒いた後、着火しそのまま爆発。犯人ら3名が死亡した。これは「衝撃映像」として注目されていたようで、どうも嫌だ。事件現場は実家から5分の場所。
・「有栖川宮」(10月)
→旧皇族「有栖川宮家」を騙った詐欺事件で3人を起訴。騙された芸能人が面白かった。あと、「宮家きってのダンディ」と紹介されていたのが笑えた。その顔でダンディはなかろうと思った。
・「オレオレ詐欺が多発」
→これだけ知られるようになったんだから、ずいぶんとリスクの高い詐欺だと思う。ニュースで、手法が巧妙になってきているとやっていた。弁護士や暴力団を装って詐欺行為に及ぶのだとか…っていうか、それはもはや「オレオレ詐欺」ではない。いつから「オレオレ詐欺」=「電話を使って詐欺行為をすること」になったんだ。
・「タトゥー、ドタキャン騒動」
→さすがに「お騒がせデュオ」の手法が通じなくなったのか、東京ドームのコンサートはガラガラだった。日本テレビがどれだけ損害をこうむったのかが知りたい。
・「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」
→新幹線の居眠り運転士によって有名に。
・「ヨルダンの空港で毎日新聞五味宏基記者の手荷物が爆発」(5月)
→世間は一斉に批判したけど、「お前らだってやりかねんぞ!」と軽く擁護(?)した記憶がある。危険なところを取材したという「記念」が欲しかったのだろう。日本人の「記念に…」という執念をなめてはいけない…って書いたっけ。
・「辻元清美・前議員を詐欺容疑で逮捕」(7月)
→社民党のエースの逮捕は痛いかなぁ。結構、好き嫌いがわかれるタイプで、僕は嫌いだった。社民党にとっては大打撃だった。それがやや残念。
・「民主党と自由党が合併」(10月)
確かに合併効果はあったのだろうが、
・「柱谷監督と古瀬アナの不倫騒動」
→J2のモンテディオ山形の柱谷幸一監督とNHK山形・古瀬絵里アナの不倫交際が報じられた。「インフォシークユーザが注目した2003年10大ニュース」では何と9位(笑)。その要因は、スポーツ紙などが取り上げた古瀬アナの「スイカップ」「魔乳」であろう。これは公然セクハラじゃないか、と言った記憶がある。
・「ベッカム様」
→W杯からずいぶんと落ち着いたが、今年もベッカム人気は健在だった。妻のヴィクトリアとの来日、マンチェスターU・ファーガソン監督との確執、レアル・マドリードへの移籍…などが話題に。日本はその膨大な移籍金の影のスポンサーですかね。
・「原監督辞任」
まぁ、どうでもいいんですけどね。監督がより地味になって、巨人の人気がなくなるんであれば、大歓迎ですな。
【オマケ】
■大晦日、民放3局が格闘技をやる。いつからこんなに野蛮な国になったんだ。かといって、紅白の衣装や演出はもっと悪趣味で野蛮だが。確かに格闘技は視聴率が取れるが、これほど競合しては潰し合いになるのは見えているし、格闘技ファンにとっても不幸だ。
■基本的にはPRIDEが好きだが、「男まつり」ってなんか嫌だなぁ。むさくるしいったらないじゃないか。どうせ高田延彦が「お前は男だっ!」って言ってしめるんだろ。カリスマにでもなったつもりか。
■K−1は人気低迷っぽいが、「ボブ・サップ×曙」はやはり魅力的だ。曙が勝てるとはとても思えないが、試合展開がわかりにくく非常に興味深い。
■『イノキボンバイエ』は「馬鹿になれ夢をもて」というサブタイトル。猪木は「元気ですかー!」や闘魂注入(ビンタするだけだが)をやって、オプション料として、大量のギャラを請求するそうだ。なんかの雑誌で猪木は「馬鹿」どころか非常にしたたかだ、と突っ込まれてた。
■田村亮子の披露宴は笑わせてもらいました。あそこまで醜態をさらしてまでネタを提供するガッツはすごい。何と言うか、本当に「裸の王様」って感じで、誰かが「王様は裸ですよ」と教えてやらないと、本人のためにならないと常々思っている。
■道路公団民営化―結局、玉虫色の決着ということで、双方ともに勝った勝ったとバンザイをしている。なんだかマヌケだ。強硬な主張をしてきた猪瀬直樹は最後で妥協。これぞ御用文化人の真骨頂ってやつか。権力の座につこうって奴はやっぱ違うね。
■リビアのカダフィ大佐が大量破壊兵器を放棄すると声明を出した。これはフセインから学んだことだろうし、当然、アメリカの圧力があってのことだろう。「ならず者国家」としては賢明な選択をしたと思う。そうでもしないと、イラクの二の舞だ。もはやアメリカにとって「ならず者国家」は眼中になく、最大の敵は「テロリスト」ということになろう。標的が見えないぶん、「テロとの戦い」はいっそう厄介だ。
■だんだん雑になったり、文体が急変してるのは、「こんなことしてる場合じゃない!卒論を書かなきゃ!」と我に返ったからです。ご容赦ください。
■卒論を書こうと思っていたが、ちょっと前は「お言葉を返すようですが…」をどうなんだというぐらい更新していた。まぁ、イラク情勢などについて、軽く意見を述べているので、よかったらのぞいてみてください。
人々の問題発言や印象的な言葉を取り上げるつもりだったが、明らかに趣旨が変わってきていますね。産経新聞とかどーでもいいような発言を引っ張り込んできてる。つい自分の考えを書きとめておきたくなるわけだが、「生活ノート」は更新停止宣言してしまったので、こっちに強引に書いている。
卒論提出+試験まで更新しない…と誓うのであった。
取ってつけたような締めくくりになりますが…よいお年を。


2003年12月23日火曜日

新語・流行語大賞 2003年

「2003新語・流行語大賞」に「毒まんじゅう」「なんでだろう〜」「マニフェスト」が選ばれた。


■毒まんじゅう
授賞式には野中広務が登場。毒饅頭を食らって即死した村岡兼造…化けて出なけりゃいいけど…って死んでないか。


■なんでだろう〜
言うまでもなく、お笑いコンビ・テツandトモのやつ。NHKアナウンサーがニュース原稿を読む際に、「なんでだろう〜」と中途半端にリズミカルだったのが笑えた。はなわ・ダンディ坂野は落選。しかもダンディは紅白にも出れないってんだから、キツイよなぁ〜。


■マニフェスト
授賞式には、元三重県知事の北川正恭・早大教授らが受賞者として招かれたとか。まぁ、マニフェストを広めた功績は大きいかな。今年だけのブームになるとの見方が強いが、たぶん、マニフェスト重視の選挙は今後も続くと考えられる。


大賞以外のトップテンには…

■勝ちたいんや!
星野仙一の言葉。ん〜、阪神で盛りあがってたし、まぁやむおえないかな。

■コメ泥棒
なんじゃそら。サクランボ泥棒じゃなくてコメ泥棒なんだね。

■SARS
そういえば、今年だったね。まったく妥当なところです。

■「年収300万円」
インチキ・エコノミストの森永卓郎の著作『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)から来ているとか。世相は反映していたとしても、この言葉が流行したかどうかは疑問だ。ただの本の宣伝じゃないか。人には「300万で生き抜け!」と言っておきながら、森永の懐はうるおうばかりだ。なんでも印税が3000万円入ってきたとのこと。カネでも渡したんじゃなかろうな。

■「バカの壁」
養老孟司の著作。いやぁ…まだ読んでない。これぐらい売れると、常識として読んでおいた方がよさそうな勢いである。ブックオフの100円コーナーで買おう。もうそろそろ並ぶころだろう。

■「ビフォーアフター」
テレビ朝日の番組ですかね。確かにリフォーム番組って見てしまうよなぁ…でも、流行語か?

■「へぇ〜」
おかしいなぁ…最有力候補だと思ったのだが。他のテレビ局に気を使ったとか?フジテレビの消沈ぶりが笑えた。
私の中では、「トリビアの泉」がゴールデンに進出して、流行ってしまった時点で急速に冷めてしまった。しかも、意図せずに「へぇ〜」と口走ってしまったら大変だ。ミーハーな奴と思われかねないのだ。


ちなみに、「エロ拓、山タフ」(山崎拓前自民党副総裁)は最終選考にも残れず、自身の選挙同様に落選したとか。合掌。


2003年12月17日水曜日

ブッシュ大統領・イラク裁判


■ブッシュ大統領 ―ABCテレビのインタビューで。
「これはアメリカの大統領が決めることではなく、イラク市民が決めることだ」

フセインが捕まったというニュースを聞いて、イラクの国民が喜ぶ姿よりも、ブッシュやラムズフェルドのうすら笑いが浮かんできて、どうも嫌な気分になった。捕まったフセインは「ア〜ン」と口を開け、従順で情けない映像を流されていた(歯を検査されてた)。で、当然のように、ブッシュの支持率は5%ほど上がっているらしい。嫌だ嫌だ。

インタビューで、フセインは「究極の裁きを受けるに値するへどが出るような暴君」と断罪された…「世界の暴君・アメリカ」の大統領によって。


■フセイン裁判は東京裁判方式

イラクへのミサイル発射・殺戮やり放題だったブッシュが、「イラク市民が決めること」などと言い出した。出来レースというか、リンチ裁判と批判されることはわかっているから、傀儡政権に裁かせて、「イラク人が裁いた」ということにするんだろう。

裁判はイラク統治評議会が設置を準備する、イラク人中心の特別法廷で行われる予定。結局、反フセイン陣営によって裁かれるわけで結果は見えている。しかも、同法廷は「米国が過去の経験に基づいて助言している」(バウチャー米国務省報道官)ため、アメリカの意向が反映されやすいとの指摘が既にある。そんな中、大統領の「死刑宣告」である。

勝者による裁判になることは明白で、その正当性には疑問が残るだろう。「ポチ保守」には東京裁判(極東国際軍事裁判)を思い出してもらいたい。

ポチ新聞の産経は、「法の裁きはイラク人で」と言い、

「今後、米国はフセイン恐怖政治の弾圧と殺戮を法廷で裁くことになる。『法の支配』が厳格に守られるなら、イラク統治評議会のハキーム議長が述べたように『イラク人裁判官により特別法廷で裁かれる』ことが妥当である。フセイン元大統領がいくら大量破壊兵器の保有を否定し、クルド人殺戮を自己弁護したとしても、見苦しい独裁者の命ごいとして白日の下にさらされるはずである。」(16日社説)

と主張する。

結局、「勝者による裁判」を否定し続けてきた矛盾を払拭しきれていない。反フセインで、アメリカの意向を無視できないイラク統治評議会による裁判だ。

東京裁判は、アメリカの意向に沿った日本人が形式的に参加してさえいればよかった、と主張するのだろうか?

で、結局、過去の犯罪を持ち出して、裁くしかないんですね。だったら、なぜ今になって攻撃したんだろうか。「大量破壊兵器の保有を否定し、クルド人殺戮を自己弁護したとしても、見苦しい独裁者の命ごい」って言うんだけど、その点をうやむやにしてないか?


■フセイン級の脅威とブッシュ級の脅威

ブッシュは大量破壊兵器について問われると「フセインが脅威だったことには疑いがない」と語気を強めたという。

「脅威だったことに疑いがない」…そんな理屈でもって、圧倒的軍事力を行使するブッシュ大統領。超大国アメリカの恐ろしい論理が世界の「正義」を決める。

フセイン級の「脅威」など霞んで見える。


2003年12月9日火曜日

小泉純一郎・憲法


■小泉純一郎・総理大臣
「憲法前文にあるように、日本国の理念、国家としての意思が問われている。日本国民の精神が試されている」

小泉首相は、国際協調の重要性をうたった前文の一部を読み上げた。
「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」
「国際貢献」「人道支援」という美辞麗句で国民を説得をはかる一方、憲法前文をその主張の後ろ盾にした。
「憲法をよく読んでいただきたい」と言ってたけど、「憲法改正」ってな人物からこんな言葉が出てくるとは意外だった…
■よく聞かれる問答?
反対派「戦争自体に大義がなかったじゃないか?」
賛成派「戦争の大義はともかく、実際にイラクで苦しんでいる人たちがいる。その人たちを助けるために自衛隊を派遣するんだ。」
反対派「イラクの人々を苦しませる原因を作ったのがアメリカじゃないか」
↑は賛成派と反対派の議論を聞いていると必ず出てくる問答である。
まず、イラク国民を不安に陥れている根源を忘れている。「大義」をうやむやにされては困る。僕は「大義」こそ問い続けたい。イラク国民を戦乱に巻き込んでまで、フセイン政権を倒さなければならなかったのはなぜか?そして、その大義なき戦争(イスラームから見れば「侵略」以外の何物でもない)をしたアメリカが、統治(占領)し続けることで新たなテロを生み、復興を妨げ、イラク国民を不安に陥れているではないか?
「人道支援」の御旗を立てられると、反論がしにくくなる。だから推進派は「人道支援」を持ち出して理論武装をするのである。
現実問題として、人道支援には線引きが必要なのである。たとえば、世界中には飢餓や貧困に苦しむ人々がたくさんいるので、「この人々を救うために、生活に必要な収入以外は全部差し出しましょう」という主張は受け入れられるだろうか?やはり現実的には、人道支援に対してコストをどこまで受け入れるかという問題が存在するのである。今回の「イラク派遣」で言えば、自衛隊の死・テロの標的化・「テロとの戦い」への強制参加といった大きなコストがあるのだ。「人道支援」というきれいごとだけを並べるのは卑怯だ。
しかしまぁ…推進派の「人道支援」って言葉ほどうそ臭いものはない。というのも、おおむね推進してる面々を見ると、世界の貧困・飢餓に無関心であって、覇権ばかりを追っている連中である。そんな連中が、急に「イラク国民のため…」と「人道主義」を掲げだした。いったい「にわか人道主義者」は途上国支援のあり方をどれだけ注視してきたのか?ODAに「国益」を持ち込もうと目論んでいるのはいかなる勢力か?
■よく聞かれる問答?
賛成派「石油を中東地域に依存している日本にとって、中東地域の安定こそ国益だ。イラクは世界で2番目の石油埋蔵量を持ち、安定的な供給が国益になる」
反対派「中東地域を不安定化させているのがアメリカだ。イラク派遣は親日であるアラブ諸国に反日感情をもたらすことになる」
アメリカこそ中東の不安定要素であるということ、イラクはアメリカが占領し続ける限りうまくいかないことを付け足す必要がある。もっとも、イラクで血を流して、ボス(アメリカ)から略奪品(石油)をわけてもらう…というのであれば、「国益至上主義」的な観点からは正当化する余地があるが。
■「国益」と日米同盟
結局のところ、イラク派遣を正当化し国民の支持をとりつけるために、「イラク国民」を持ち出しているだけだ。このアメリカ譲りの「ご都合主義」ってのは、いかにも「ポチ保守」である。
「アメリカ追従」と思われたくないせいか本音が出てこない。下手糞な理論武装はやめて、正直に言えばよいと思う。自衛隊が何人死のうが、日本がテロの標的になろうとも、知ったこっちゃない、アメリカに恩を売ることこそ「国益」であり、利権のおこぼれをもらうために自衛隊を派遣するのだ、と。
多くの国民の命を犠牲に「国益」を追求するというのなら、そんな「国益」なら捨てちまえ…と言いたいが。
日米安保はアメリカのご機嫌をたえず伺っていないと維持できないというのか?
我々がこれまで大事にしてきた日米安保とはその程度のものだったのか?
「『人道支援』をするために自衛隊はあるが、現在のイラクはその任務を遂行する状況にない」
…そう言えばすむことじゃないか。
↓以下、ボツ稿。
■推進派の弁明
「サマワの人々は自衛隊の派遣を望んでいる」
それを持ち出すなら、イラク人はアメリカ占領軍は出ていくこと望んでいる。
■イラクでは戦争状態が続いている。「戦闘地域」に突っ込んで行って、「正当防衛」と称して戦争に出かける。
■保守派は自衛隊をより「軍隊」に近づけることに成功してさぞ満足しているだろうし、「国際貢献」の足かせになっている憲法改正へはずみがつくだろう(皮肉なことに護憲派が「憲法に抵触する」と言えば言うほど、憲法改正への動きは加速する)
■アメリカ追従することこそ国益か?「アメリカ追従」への感情的な反発を排してこの問題を考えると、それはそれで重要な論点になりうる。
■「ジャパン・パッシング」とか「ジャパン・ナッシング」と言われたことを考えると、小泉首相になってから(アメリカの事情が大きいが)、日米関係は非常にうまくいっている。


2003年12月8日月曜日

産経「戦争を起こさせた側にも責任」

■産経抄(産経新聞・12月8日付け)
「しかしもし戦争を起こした側に責任があるとすれば、戦争を起こさせた側にもそれがあるはずである。」

イラク派兵推進派にうんざりしているせいか、最近、産経ネタが多い。まるで朝日新聞を執拗に叩いているネット右翼みたいだ。

まず、前置きとして産経が大好きな「大東亜戦争」についてでてくる。

「日本が大東亜戦争に駆り立てられた動機ははたして『侵略』にあったのか。明治維新によって近代国家になった日本にとって、ロシアの南下政策は大きな脅威であり、アジアへ進出した西欧列強も日本をおびやかした。」
「マッカーサーは日本は自衛戦争をしたと述べたのだが、そういう日本の『戦争責任』がいまもしばしば論じられている。執拗に責任を追及するものがいる。しかしもし戦争を起こした側に責任があるとすれば、戦争を起こさせた側にもそれがあるはずである。」

いかにも産経って感じの文章である。
まず、他の先進国が全部正しくて、日本やドイツだけが悪い、なんて見方をする人間はいないわけだし、そのことと被占領国に対して「あれは自衛だったから正当だ」と言うのは全く別問題である。被占領国には「戦争を起こさせた責任」は無いのだからね。
まぁ、こういう言動をして韓国・中国に蒸し返してもらわないと、自らのアイデンティティを喪失することになるからな。そのことでどれだけ「国益」を失っているか自覚して欲しいものである。

たぶん、こういう前置きをしたのは反米保守派の心理をゆさぶるためだろう。次の文章でイラク戦争の正当性を説く。


「イラク戦争を見ればはっきりするだろう。先制攻撃をしたのはアメリカだが、ではその単独行動主義の戦争責任だけが責められるのか。サダム・フセイン政権のクルド人虐殺やテロ支援や独裁や専制に問題はないのか。戦争責任をいうなら戦争を起こさせた側にもあるというべきだろう。」

大量破壊兵器が見つかんないから、困ってんだろうなぁ…
でもね、戦争を起こさせた側にも問題がある、って詭弁だと思わないのかね?誰もサダム・フセインが正しいなんて言ってない。これは誰もが認める共通認識だ。
しかし、だからと言って、国際法や国連を無視して武力行使に出てもよいと認めるわけ?国際的なルールを無視してもよいという理屈が認められるなら、アメリカの暴走をいったいどうやって止めると言うのか。超大国アメリカが恣意的に「ならず者国家」を排除できる。これは明らかに「国連憲章の原則への根本的挑戦」(アナン国連事務総長)なのである。


じゃぁですね、そっちがそう来るのなら、「テロ」に関しても同様のロジックを当てはめてみよう。つまり、「テロを起こさせた側にも問題がある」と。

パレスチナ問題におけるアメリカのスタンスがイスラエルに偏りすぎであるからテロが起きる。イスラームに対する偏見がテロを起こす。世界的な覇権を獲得することによって、暴利をむさぼるからテロが起きる。あるいは、アメリカが推進するグローバリゼーションへの反発がテロを起こさせる…などなど。

こういうことも指摘しないと、フェアーじゃないと思いませんか?

武力行使のような近視眼的な対策ではなくて、テロを生む原因の除去という地道な対策こそ、真の意味での「テロとの戦い」だと思うのだが。


2003年12月7日日曜日

小泉純一郎、イラク行きたい


■小泉純一郎・総理大臣 ―外交官葬儀で
「いつの日になるかわからないが、将来行きたいと思っています」

いやはや…
ブッシュ大統領ばりのパフォーマンスをしてくれるのかな?来年の参院選挙の前あたりにさ。
「どこが戦闘地域で、どこが非戦闘地域かわかるわけがない」と言い放ったまま自衛隊派遣するのもなんなんで、「イラクに自衛隊派遣を決めて、安全というなら、売れないタレントまがいの息子と行けばいい」(田中真紀子)と思いますよ。
「遺志を受け継ぎ、国際社会と協力して、イラクの復興に取り組んで参ります」という意志表明も結構なんだが、まずはイラク特措法の「非戦闘地域」について説明してください。
ちなみに、12月7日付け産経新聞の社説では「葬儀についても国葬ではなく、外務省葬だった」「国のために尊い命を散らした人に対して国が最大限の敬意と名誉をもって報いる仕組みがいかに不十分かを示している」と不満を表明している。
まぁ、死んだらアメがもらえますよ、って言わないとムチの痛みには耐えられないってわけでして。


2003年12月2日火曜日

産経新聞・朝日新聞

■産経新聞12月2日付け産経抄
しかしイラクで死んだ二人の外交官の日常は決してそうではなかった。

産経は他紙とはやはり違う。
せっかく犠牲になったんだから無駄死にさせてなるものか、とばかりに、産経は「遺志」を乱発している。
「このところ外務省の体質や外交官の行動の評判といえば、芳しくない不祥事ばかり続いた。外務省は『何事も荒立てない』を外交と心得るらしく、たとえば中国や北朝鮮に対しては主権国家として国益を踏まえた外交を展開できなかった。」
��↑結局、中国・北朝鮮に対する強硬路線を主張したいがために持ち出しているだけ)
「内には機密費流用の混乱が、外にはキャリアの退廃が指摘されていた。」「海外勤務の外交官の優雅な生態などといわれた」
おやおや、奥参事官もその件に関しては処分を受けているはずだが?
で、上記のお言葉である。
「しかしイラクで死んだ二人の外交官の日常は決してそうではなかった。」
すごいコントラストだ。そして美談が続く。
「水も電気もない生活を続け、砂嵐の下、最前線の底辺で日本の名誉を支えていた。不幸な悲劇によって初めてそうした苦闘が世に知らされることになったとすれば、これも不幸というほかない。」
��↑くぅ〜泣かせるねぇ〜)
「奥参事官の言葉が残されている。国連事務所のテロ現場では『これを見て(日本が)引くことができますか』と語り、支援の妨害には『常に犠牲はつきものだ。断固としてテロとたたかう』と語っていたそうだ。この遺志を受け継がなくて何とする。それ以外に道はないはずである。」
やっぱり「遺志」に従って自衛隊派遣せよ、という結論になる。
感情的になってイラク派遣して、いったい何のメリットがあるのか?
ちなみに、同日の社説でも「遺志」を利用している。
「奥氏は『我々はテロと闘っている』とのメールを残したが、方針通り自衛隊を派遣することが二人の遺志を生かす道である。」(産経社説)
しかもその日の社説のタイトルが笑える。「たじろいでいる国はない」である。みんなやってんだから、やりましょう。これぞまさしく日本人のメンタリティ。
各国のメンタリティを示すのに有名な話がある。
タイタニック号が沈没する際に、女性と子供を先に避難させようと各国の男性に説得することになった。
イギリス人には、「女性と子供を優先させるのがジェントルマンである」と説得した。
アメリカ人には、「女性と子どもを救えばヒーローになれる」と。
ドイツ人には、「女性と子どもを先に逃がすのが規則である」と。
日本人には…
「皆そうしているのだから、あなたも同じようにしなさい」
産経の「みんなやってんだから…」と呼応しているかのように、朝日は「どこも国論は大揺れだが、いまのところ兵を引いた国はない。いったん出せば引きにくくなる。」(朝日新聞社説)と主張。
あわわ…こちらの理由もすごい。
産経「みんなテロに屈していない。どこの国も撤退していない。」
朝日「だからこそ、自衛隊を派遣しないんじゃないか。逃げにくくなるもん。」
この潔さが妙に心地よい。
「みんなテロに屈してない…ゆえに派遣しない」というコペルニクス的発想である。


2003年12月1日月曜日

奥さんの遺志 -外交官殺害プロパガンダ

岡本行夫首相補佐官 ―イラクで外務省・奥克彦参事官の殺害に関して。
「奥氏には1つの夢があった。国連本部爆破を見て、奥参事官は『これを見て引くことが出来ますか』と言っていた。私は、奥氏のやりかけたことをやり遂げたい」
「奥参事官」が「奥さん、時間!」に聞こえてしょうがない。いったい何の時間なんだ。
コホン…
小泉首相の外交ブレーンである岡本行夫は↑のように述べ、奥氏の遺志を引き継ぎ、イラク復興支援に全力を挙げる考えを示した。
岡本の操り人形と化している川口順子外相も「亡くなった二人の遺志を受け継いで、テロに屈することなく、イラクの復興支援に積極的に取り組むというわが国の基本方針が揺らぐことはない」と語っている。
「殉職」を遂げた者は神聖化され、その「遺志」は大いに利用される。読売新聞や産経新聞もきれいに足並みをそろえる。
読売は…
「奥参事官は、外務省ホームページの連載コラム『イラク便り』で、テロで犠牲になった数々の尊い命から、テロに屈しないという『強い決意』を汲み取るべきだ、と書いていた。日本が積極的な支援に動くことこそ、任務半ばで、無念の死を遂げた二人の外交官の遺志を継ぐことにもなる。」
…と主張しているし、産経も…
「亡くなった奥克彦参事官(45)は、外務省のホームページに四月下旬以来、『イラク便り』を送り続けていた。合計七十本にも及んだ『イラク便り』の11月13日付の便りには、イラク南部のナシリヤでイタリア国家警察部隊がテロの襲撃を受け、さっそく現地の調査に飛んだことを書き、『犠牲になった尊い命から私たちが汲み取るべきは、テロとの闘いに屈しないと言う強い決意ではないでしょうか。テロは世界のどこでも起こりうるものです。テロリストの放逐は我々全員の課題なのです』と結んでいた。今から思えば、これが奥参事官、そして井ノ上正盛書記官(30)の日本人への遺言となった。」
…と「遺志」を振りかざし、説得をこころみている。なぜ「愚かなブッシュ大統領の外交政策による、日本人最初の被害者」と書かないんだろう。
あいかわらず、小泉純一郎首相は「テロに屈してはならない。」と勇ましい。まぁ、他人の「抵抗」「痛み」を見ると異常なまでに興奮するサディストだから、わかりやすいっちゃぁわかりやすいのだがね。
「イラクに自衛隊派遣を決めて、安全というなら、売れないタレントまがいの息子と行けばいい」と田中真紀子は罵倒したが、多くの国民はまさにこの気持ちではないか。
「イラク復興特別措置法の『非戦闘地域』という概念が、いかに現実離れをしたものであるかがより明白になった」(毎日新聞)のであり、「たじろぐな、さあ派遣だとなっていいはずはない。そもそも派遣の目的は人道支援や復興への協力であって、ゲリラやテロを制圧するためではない。そんな短絡した考え方は、泥沼への道につながりかねない」(朝日新聞)のである。
「短絡した考え」の産経新聞は「一部にはまた、イラクでのテロは、テロというよりレジスタンス(抵抗運動)だという議論も出ているが、テロリストたちの卑劣な暴力を正当化しようというもので、論外である。」と言っている。
「レジスタンス」論とは、たとえば、本多勝一の「風速計−『テロ』は当然である」(『週刊金曜日』11月28日発売)がそれに当てはまるのだろう。
「これはアメリカ帝国の侵略に対するレジスタンスであり、アルジェリアの独立戦争としての『アルジェの戦い』に近くなってきた。ベトナムを侵略したフランスやアメリカに対する解放戦線の戦いを『テロ』と称するのがいかに馬鹿げているか」
「アメリカ帝国の武力はケタ違いであり、地球始まって以来の圧倒的な質と量です。これに対抗する方法として、何がありますか。いまマスコミがいう『テロ』。これ以外に有効な方法が、何かあるか?」
「『テロ』は当然」と言いきらないまでも、こういう視点を忘れてはならない。これはイスラエルとパレスチナを見るうえでも重要な視点である。
一方を「テロ」と呼び、絶対的な悪と決め付けるのでは公平性に欠ける。少なくとも、「論外」とあっさりと却下してしまうようでは、「テロ」は続くのではないか。
じゃぁ、どうすればいいの?ってわけで、やや説得力に欠けるが、朝日は「復興支援を練り直せ」と言っている。
「米国は国連をはじめとした国際機関の役割を、なお限定的なものにとどめようとしている。当面は米軍が治安維持を担うにせよ、いま進めるべきは一日も早いイラク側への主権の移譲と、国連を中心にした国造りへの協力だ。武装勢力の大義名分を失わせ、復興や民主化に対するイラク民衆の意欲をもり立てなければならない。首相は日米同盟とともに国際協調も大事だと言う。日本には独自に築いた中東外交の実績もある。ならば、米国にものを言いつつ、イラク復興と反テロ協調の旗を振ることはできるはずだ。ブッシュ政権の要請に基づく自衛隊派遣だけにとらわれた狭い視野から抜け出さなければならない。それが本当の意味でテロに対抗し、イラクの復興に資することになるのではないか。復興支援が進むような確かな土台を国際社会とともにつくる。それが、亡くなった二人の遺志を生かすことに通じる。」
最後が特におもしろかった。やはり決め手は「遺志」である。
今問題になっているのは、「遺志」をどうやって自分の考えにこじつけるか、である。
■故・奥克彦氏の遺志は「国連中心主義」?
奥参事官は『外交フォーラム』11月号において、「イラクの戦後復興における国連の役割」という論文を書いているようだ。詳細はわからないが…
「国連だけは自分たちを本当に助けてくれる存在だ、と大半のイラク人は受け止めている。『米国一極の世界では、国連は米国の支持なしには無能の存在だ』との批判があるが、イラクの暫定統治、憲法に基づいた政府の樹立における国連の役割は大きい」
…と語っているそうな。この「遺志」は国連主導の復興支援に結びつける根拠になる?