旧日本軍の慰安婦問題を裁く民衆法廷を扱った特集番組をNHKが01年1月に放送する直前に、当時、官房副長官だった安倍晋三・自民党幹事長代理が「公正中立な立場で放送すべきだ」などとNHK幹部に指摘していた問題で、中川昭一・経済産業相もほぼ同内容の指摘をNHK幹部にしていたことが分かった。4年前の出来事か…何でいまさらになって出てきたんだと思ったりするが。内部告発したのは当時、番組制作にあたった現場責任者らしい。
民衆法廷を主催した市民団体「VAWW―NETジャパン」の西野瑠美子共同代表らは12日、NHKや安倍氏らにあてた抗議声明を発表後に会見し、「NHKは裁判で政治介入はないと主張し、偽証を続けていた。怒りとともに報道機関としてのNHKに大きな危機感を覚える」と話した。また、東京高裁から17日に予定されていた控訴審の結審の延期も検討しているとの連絡を受けたことを明らかにした。
■政治家の「指摘」ってのは、圧力という意味なんですけどね。政治家がメディアの口をふせごうとするのは今に始まったことではないが、これに屈するメディアというのが、なんとも情けない。「予算」によって縛られているから、というだけでもなさそうで、制度の問題だけではなさそうな感じだが。
■読売や産経が取り扱ってなくて、がっかりするが、社説…
■東京新聞/社説「放送番組介入 憲法のイロハを無視」
放送法三条の二は放送に政治的公平、論点の多角化を求める。半面、同三条には「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、または規律されることがない」とある。おもに政治家の側を批判。
肝心の三条を無視して公正原則だけを強調する二人こそ不公正のそしりを免れない。第二一条で「一切の表現の自由」を保障し、検閲を絶対的に禁止した憲法のイロハも理解していないのではないか。
中川経産相は一九九九年、所沢産野菜のダイオキシン汚染報道をめぐり、放送には何の権限もない農相だったのにテレビ朝日に農民への賠償を執拗に迫った。「権限と行政は法に基づく」との観念が欠如していると見られても仕方あるまい。
まず相手の表現を受け止めてから批判や反論をするのが民主主義の原則だ。相手の表現をあらかじめ自分の意に合わせるよう強要することは許されない。
表現、報道の自由が封じられ、悲劇的結末を防げなかった苦い経験を繰り返さないよう、表現の自由は最大限尊重されなければならず、メディアは自由を守り抜く責任がある。
予算、決算が国会の審議対象であるNHKは、ともすれば政治家に迎合する傾向があるように見える。同じような例がほかにもあるのではないかとの疑いも浮かぶ。これを機に、外部メンバーによりNHKと政治の関係を洗い直し公表すべきだ。
■朝日新聞/社説「NHK―政治家への抵抗力を持て」
政治家がテレビや新聞の報道に影響力を及ぼそうとするのは、他の国々でもあることだ。英国のブレア首相はイラク戦争の報道をめぐってBBCと激しくぶつかった。米国のホワイトハウス高官や有力政治家がテレビ局に電話で圧力をかけたことも珍しいことではない。しかし、報道機関は抵抗している。こちらはNHK側にアクセントを置いている。ま、2人の政治家は責められて当然だが、どうやってNHKの与党服従の体制を改善させるかの方が重要だと思うな。
NHKと同じ公共放送であるBBCは80年の歴史のなかで、何度も政府と対立してきた。そのたびに独立性を保つ戦いを政府に挑み、国民の信頼を得てきた。
番組や記事が視聴者や読者、つまり国民のためになるか、中立公正であるか、それを判断するのはあくまで報道機関自身でなければならない。
NHKは「自主的な判断で編集した」と繰り返している。だが、2人の政治家は発言を認めている。NHKは事実関係を徹底的に検証しなくてはならない。それが再生にもつながる。
政治家の圧力をはねのける知恵もいる。産業再生機構は、政治家の要請をすべて最高決定機関に報告する仕組みを作り、そのことを政治家にも伝えている。
NHKの最高決定機関は経営委員会だ。そのトップも代わり、改革を急いでいる。まずは今回の出来事をきちんと解明して二度と起きないようにする。視聴者代表としての委員会の責任は重い。
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