■読売新聞/社説[新防衛大綱]「安保環境の変化に立ち向かえ」
【「世界の中の日米同盟」】
「国際的な安全保障環境の改善」は、日本が主体的に行うべき課題だ。これまで積み重ねてきた、国連平和維持活動(PKO)、インド洋上での自衛隊艦船の活動、イラクへの自衛隊派遣なども、その具体的な取り組みと言える。
大綱が、国際平和協力活動を国土防衛と並ぶ自衛隊の本来任務と位置付けたのは、時代の要請でもある。
日本周辺やアジア太平洋地域での米軍の存在と日米同盟は、地域の安定の“公共財”である。国際的な安全保障環境の改善も、唯一の超大国である米国の存在を抜きには考えられない。日米同盟関係は、一層「世界の中の日米同盟」という性格を強めることになるだろう。
安保環境の変化に伴い、日米同盟をどう深化させるのかは、日本にとって極めて重要な課題だ。
当面、米軍の変革・再編に伴う在日米軍の再編問題などに関する戦略対話が重要だ。米軍は陸軍第一軍団司令部をキャンプ座間に移し、北東アジアから中東に至る、いわゆる「不安定の弧」での米軍の活動の指揮機能を持たせることを検討しているという。
この地域で紛争が起きれば、日本にも影響する可能性がある。不安定の弧に沿った海域は、日本が原油輸入の九割近くを依存する中東から日本への海上輸送路でもある。日本の国益という観点からも、不安定の弧の安定化に、出来る範囲で役割を担う必要がある。
■朝日新聞/社説「防衛大綱―この選択でいいのか」
だが日本の防衛政策は、新大綱が示す方向にこのまま突き進んでいいのか。
日米は同盟関係にあるにしても、脅威の見方から脅威への具体的な対処まで、米国の軍事戦略をそのまま受け入れ、協力することが、必ずしも日本の利益になるわけではない。今の米国と世界の現実を踏まえれば、日米同盟を強化しさえすれば何事もうまくいくほど単純ではないのだ。
米国が始めたイラク戦争をめぐって、世界は分裂している。米国に付き従っているだけでは、これを修復して国際協調態勢を立て直そうにも思うに任せない。
米国と一体化しつつ、自衛隊の海外への展開を広げる日本に向けられたアジア諸国の微妙な視線も、考慮しなければならない。
さらに大きな問題は、米国と国連の対立だ。大綱はその基本方針の中で「我が国は、国際の平和と安全の維持に係る国際連合の活動を支持する」としている。しかし、核実験の禁止や国際刑事裁判所などでも、多くの国連加盟国と米国との亀裂はあまりにも深い。それが、紛れもない現実ではないか。
小泉首相は「世界の中の日米安保」と言うが、「日米安保の中」だけに世界があるわけではない。
■ずいぶんと前から指摘されていることだけども、日米安保の質は明らかに変化してきている。が、その方向性について、「国民的な議論」というやつがなされていないんじゃないか。
■国民がそれを望んでいるのか極めて疑問だが、ともあれ、なし崩し的に「世界の中の日米安保」になっているんだ。気づかないうちに、こんなとこまで来てた…ってなことにならなきゃいいが。
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