2004年12月2日木曜日

流行語大賞2004

■<流行語大賞>北島康介選手の「チョー気持ちいい」(毎日新聞)
 今年の「ユーキャン流行語大賞」(現代用語の基礎知識選)の大賞にアテネ五輪の金メダリスト北島康介選手の「チョー気持ちいい」が選ばれ、1日、東京都内で表彰式が行われた。従来の「新語・流行語大賞」が今年から改称された。
 なんだ…つまんないの。結局、下馬評どおりか。若者のボキャ貧を示すこの言葉が選ばれたのは、「日本語力」低下への問題意識を喚起するためです。

■その他「トップテン」(順位はない)と受賞者は…
  • 気合だー!(アニマル浜口とアテネ五輪銅メダリスト・浜口京子)
  • サプライズ(武部勤・自民党幹事長)
  • 自己責任(表彰者なし)
  • 新規参入(ライブドア社長・堀江貴文)
  • セカチュー(作家・片山恭一)
  • 中二階(参院議員・山本一太)
  • って言うじゃない…残念!!…○○斬り!(波田陽区)
  • 負け犬(エッセイスト・酒井順子)
  • 冬ソナ(吹き替えをした萩原聖人・田中美里)
 予想はかなり外れているけども、知らないものはないし、まぁ、こんなもんかな。

■でも、「たかが選手が」がトップテンにも入ってないのは絶対におかしい。やっぱ読売にびびったな、このチキン野郎どもめ。読売グループを敵に回しても、損失しか残らないってわけです。象徴的なことに、今年から「ユーキャン」という広告を冠につけてるわけだからね…この賞は商業主義にどっぷりつかってるってことでしょう。

■審査委員長は藤本義一らしい…読売系列にはさんざんお世話になっているものね。そら配慮するわ。

■そういえば、この人も日テレっ子だな…
自称「ギター侍」の波田陽区さんは着物にギターのいつもの姿で登場し、「サプライズ」で受賞した武部勤・自民党幹事長に向けて「拙者が選ばれるなんてこの国はどうかしていますから。残念!! 武部さんお願いしますよ。斬り!」と叫び、会場を沸かせた。
 おいおい…武部さんにお願いしたら、ますます日本がおかしくなっちゃうって。 「武部幹事長」って、それ自体がこの国のおかしさを示していますから、残念っ!

■「自己責任」の該当者がいないのはなぜ?真っ先に世論誘導した読売新聞でもいいし、あるいは政府の責任を放棄した外務省の竹内行夫・事務次官でもいい。

■で、「中二階」が入ってんのに、「人生いろいろ」が入ってないわけ? 参院選に大きな影響を与えたのに。首相のいいかげんな答弁が目立った年だったので、ぜひ入れて欲しかったのだが。ま、読売に気を使ったのと同様に、びびったのかな。

■それとも、政治的な色が出ることを恐れたのか…でも、去年は「毒まんじゅう」が選ばれてるしな(それを食らった村岡兼造は瀕死状態だが)。

■新規参入…堀江貴文社長が「新規参入できなかった僕がなぜか受賞した」と言っているように、ちょっとおかしい。まぁ、三木谷社長よりも堀江社長を呼んだほうが注目を集められるって話。そういえば、古田を呼ばなかったのか…予想が外れたな。

■冬ソナ…なんで「ヨン様」じゃないんだろ。おばちゃんたちの熱狂ぶりがより伝わってくるのは「ヨン様」でしょ?それは韓流ブームの象徴でもあるし。 「冬ソナ」って、なんか味気ないよね。

■負け犬…紀宮さんが結婚したために、見事に選ばれました。「負け犬の遠吠え」という本はまるっきし読んでいないので、コメントに窮するのだが…

■「本書を読まれる前に」より
負け犬とは……
狭義には、未婚、子ナシ、三十代以上の女性のことを示します。この中で、最も重要視されるのは「現在、結婚していない」という条件ですので、離婚して今は独身という人も、もちろん負け犬。二十代だけどバリバリ負け犬体質とか、結婚経験の無いシングルマザーといった立場の女性も、広義では負け犬に入ります。つまりまぁ、いわゆる普通の家庭というものを築いていない人を、負け犬と呼ぶわけです。
 この挑発的な前文によって、「負け犬」という言葉だけが一人歩きしている状態のようだ。もちろん、筆者の意図はまったく別のとこにある。

■で、今回の受賞によって、「負け犬」という断片的な言葉だけが焦点にあたり、この言葉はますます一人歩きを続ける。これが「結婚して育児をすることこそ女の幸せ」と思い込ませる洗脳としての役割を担うってわけだから、この筆者は何とも罪深い。少子化対策費として、政府・厚生労働省が出資しているんじゃないか。


【追記】識者に聞く今年の流行語―たかが選手 怒り爆発(東京新聞12/3,特報)
 まず、トップバッターは社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」プロデューサーの杉浦正士(まさひろ)さん。杉浦さんが挙げたのは「たかが選手」。言わずと知れた渡辺恒雄・前巨人軍オーナーの一言だ。
 「唯我独尊オーナーとそれにすり寄る他球団のプードルオーナーたち。この一言で、七十年間続いたプロ野球が見事に崩壊した。(流行語大賞に)なぜ、この言葉が含まれていないのか、不思議で仕方ない。『労働組合』とか、『ストライキ』といった日本社会の中で死語になっていた言葉を復活させたのも、この発言の副産物だった」
 「チョー気持ちいい」「気合だー!」など五輪に絡んだ言葉が上位を占める今年の「正調」流行語大賞については「上っ面を見ているだけ。本質が浮き上がってこない」とバッサリ。
 「『冬ソナ』人気もそうだ。この前、ぺ・ヨンジュンが来日したとき、ニュースで『この歓迎ぶりはビートルズの来日以来』と伝えているのを聞いて、一緒くたにするなと頭に来た。来年になったら『ああいう人もいたね』っていう話になっているんじゃないかな」
 そもそも、「流行語」と言っている時点で、本質を浮き彫りにするってことがなじまないって気もするが。
■そりゃ「ヨン様」とビートルズ来日とはまったく違うよね。
 その「冬ソナ」はユーキャン流行語大賞トップテンにも入っているが、テレビ番組の名前ではなく、「一人の芸能人が日本人の韓国に対する先入観をあっという間に和らげてしまった」象徴として、あえて「ヨン様」を選んだのはテレビプロデューサーのデーブ・スペクターさん。
 「結局、一芸能人の方が政治家や外務省よりもはるかに影響力があることが、はっきりしたわけだよね」と政治家や役人には辛口な言葉を投げかける。
 その一方で、スペクターさんは「アジアにありながら西洋の仲間に入っていた日本が、急にアジアに目を向け始めたことには不安な要素もある」と話す。
 「日本は欧米に追いついていくことに疲れ、一種のあきらめを感じているんじゃないかな。ヨン様ブームは韓国への先入観を和らげたけど、日本が安易な方向に向かいつつあることも示しているような気がする」
 そういう部分はあるかな。でもそれに過剰な期待はできないでしょ。
 経済小説を得意とする作家、江上剛さんは「大手企業の不祥事、特にごまかしが目立つ年だった。その意味では、流行語には企業の『コンプライアンス(法令順守)』を、今後への大きな課題として挙げたい」と強調する。
 江上さんは、ごまかし例をすらすらと挙げた。UFJ銀行の検査妨害、三菱自動車のリコールにかかわる一連の不祥事、ディーゼル車規制の部品を虚偽データ使用して販売した三井物産、西武鉄道がコクドなどグループ企業の持ち株比率を虚偽記載していた問題―。
 「三井物産、三菱自動車、西武鉄道などは、数年の間に不祥事の発覚で謝ったはず。再出発とは名ばかりだったのか。UFJ問題にしても、過去の大蔵省に対する接待汚職から根がつながっている事件だが、改められてこなかった。大企業の不祥事が相次いだことで、コンプライアンスは切迫した課題となった」
 コンプライアンス…たしかに、よく聞くようになった。でも、いちいち横文字にしなくても…って気が。
■強者への皮肉出にくい世相
 流行語といえば、やはりこの人を置いては語れない。小泉首相だ。人材育成コンサルタント辛淑玉さんは社会への怒りや不満をぶつけたり、強い者を皮肉る流行語が出にくい世相に危ぐを抱く。そこで選んだのが同首相の「非戦闘地域」「二度と戦争を起こしてはいけない」という発言だ。
 首相は自衛隊のイラク派遣の前提となる「非戦闘地域」の定義について、十一月の党首討論で「自衛隊が活動しているところは非戦闘地域」と強弁。辛さんは「じゃあ、自衛隊が行けば米軍が総攻撃したファルージャも非戦闘地域になるのか」と怒りを隠さない。
 「二度と…」発言は、十一月の日中首脳会談後の記者会見でだ。「現実はまったく反対。政府はイラク戦争を支持し、戦地に自衛隊を送り、多国籍軍参加を国会抜きで決めた。そもそも、首相は靖国参拝を戦争犠牲者に哀悼の意を示すため、と言っておきながら、近くの国々を戦争に巻き込んだ歴史をよく知らない。戦争に反対して、特高警察に殺された人の墓参りにも決して行かない。まさに首相は『バカの壁』だと感じた一年だった」と言い切る。
 政治評論家の森田実さんが挙げるのも、国民の心に刻まれた小泉首相の「いろいろ」発言だ。大もめだった年金国会で、自らが会社員だった当時、勤務実態がないにもかかわらず、厚生年金に加入していた問題をめぐり「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろだ」とはぐらかし、国民の口を思わずあんぐりと開かせた、あの一言だ。
■『小泉政権の本質を表す』
 「小泉政権の本質を表した言葉。政治が無責任、悪ふざけ、ごまかしの時代になったことを象徴した。こういう重大な言葉に比べれば、『チョー気持ちいい』なんてどうでもいい。続発する集団自殺や就労、就学、職業訓練もしないニートと呼ばれる数十万人の存在など、本当の世相はもっと暗い。社会の暗部を隠し、無意味な明るい言葉だけを選んでいる。政府にこびているような印象すら受ける」

 最後に「老人党」提唱者で、作家のなだいなださんは「日本の社会で未熟さが進んでいくことを強く意識させられた年だ」と語る。
 なださんは、流行語大賞として「文壇のモーニング娘。」を推した。作家の筒井康隆さんが最近の新人作家のアイドル化について指摘していた言葉で、今春の芥川賞を最年少の早稲田大二年在学中の綿矢りささんと、作家デビュー間もない金原ひとみさんが同時受賞したことで、一気に広まった。
 「筒井さんは、いくら出版不況だからといっても、若年女性の受賞で話題づくりするのではなく、ほかに選ぶ作品があるのではないか、と疑問を投げかけた。でも、未熟なものの方が受けちゃう現実がある。理由は分かりやすいから。ことしの流行語大賞にしても『気合だー!』なんてのが簡単に受けてしまう」
 そのうえで、批判の先を文壇だけではなく、日本社会全体へと向けた。
 「政治家も、小泉首相のひと言発言が受けたり、若いという理由で安倍晋三幹事長代理に人気が出た。老人世代から見れば苦労が足りないと映るのだが、未熟なものが受ける。選ばれる側も、選ぶ国民も人間が未熟になっている。文壇のモーニング娘。というのは象徴的な一例にすぎない」

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