2004年11月11日木曜日

自衛隊・撤退論

■産経新聞/社説「サマワ自衛隊 撤退論に大義はあるのか」(11/10)
 サマワ駐留の自衛隊の安全確保に万全を期さねばならないのはいうまでもない。しかし、来年一月の選挙を前に、十二月で撤退というのであれば、国際的な責任を放棄したとの謗(そし)りを免れないのではないか。
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 一方、民主党は近く、自衛隊のイラク派遣期間延長を阻止するための法案を提出する。自民党内の動きを踏まえたのだろうが、イラクで尊い汗を流している自衛隊員を考えれば、政争の具にすべき問題ではない。

 第一、民主党は昨年十二月、新たな国連決議の採択とイラク国民による政府の樹立を条件に復興支援での自衛隊活用に取り組むとする基本見解をまとめている。

 イラク暫定政府は樹立され、多国籍軍への参加を求める新国連決議一五四六も採択された。民主党の条件が実現したことに目をつぶり、派遣廃止法案とは一貫性を欠いていないか。

 首相は派遣終了に関して、「復興支援活動の目的を達した」場合などを挙げた。大義のない撤退は国として取り返しがつかなくなることを銘記すべきである。
 へぇ…で、産経は、いつのまに「大義」という言葉を覚えたんだい?

■昨日の社説だからなのか、ちょっとずれている。民主党は「戦闘地域」だから撤退すると言い出しているのであってね。ま、民主党の方針がよくわかんないってのは事実なんだが。

■読売新聞/社説[イラク情勢]「民主党の無責任な自衛隊撤収論」
 政権を目指す責任政党として疑念を抱かせる姿勢だ。 民主党の岡田代表が党首討論で、イラクに派遣されている自衛隊の撤収を求め、イラク人道復興支援特別措置法廃止法案を今国会に提出する方針を表明した。
 岡田氏は、治安情勢の悪化で、自衛隊が派遣されている南部サマワ地区も今や「非戦闘地域」ではない、と言う。自衛隊員の安全も守れない、と主張した。給水などの活動に「自衛隊がやるべき仕事なのか」という疑問も呈した。
 イラク情勢は確かに厳しい。だが、来年一月の国民議会選挙から来年末の本格政権発足に至る民主化プロセスの前進へ今、最も重要な局面にある。この時点で自衛隊が撤収すれば、日本が、イラク再建を支援する国際社会の結束を真っ先に崩すことになる。
 いやはや、さんざんアメリカ追従しておいて、「国際社会の結束」とか言い出すもんだから、恐れ入る。それとも、アメリカ中心の世界を作ろうという信条の持ち主?

■アメリカの単独行動主義に喝采していたと思いきや、国際協調の御旗を持って、戦場に馳せ参じるってわけね。この論理を使えば、どんな状況下でもアメリカの忠犬でいられるっていう仕組みだ。

■いやいや、そんな国際協調とかよりも根本的な問題といいましょうか、憲法との関係でどうなのかって話がありましてですね…

イラク全土に非常事態宣言が出ているが、サマワ地区で戦闘が行われているわけではない。自衛隊宿営地へのロケット弾の着弾なども、「国または国に準ずる組織」による「組織的、計画的、継続的な攻撃」とは言えない。現状では、サマワ地区は「非戦闘地域」だ。
 ひょっとすると、「テロとの戦い」がわかってないのは、こういう強弁をする人たちなのかもね。

 同盟国である米国が治安回復に全力をあげている時、「我々は引き揚げるが、米国には引き続き頑張ってほしい」と言って、同盟国としての信頼関係を維持できるだろうか。同盟の信頼関係が損なわれれば、日本自身やアジア太平洋地域の安全保障にも悪影響を及ぼす。
 読売の本音…最初っからそう言ってもらった方がわかりやすいのにね。 むしろ、「国際協調」とか「人道支援」っていう建前はどけておいた方が、よっぽど建設的な議論が期待できると思いますよ。それはそれで、「アメリカというスーパーパワーとどのように付き合うべきか?」は(私を含め)「リベラル」を自称する人らが乗り越えなければならない大きな論点ですからね。

 民主化のプロセスが進み、情勢が安定すれば、無論、自衛隊派遣の必要はなくなり、復興支援は民間企業や民間活動団体などにゆだねられることになる。 そうした状況を一刻も早く作り出すために出来る限りの力を尽くすことが、国際社会の一員としての責務ではないか。岡田氏も、責任政党の党首であるなら異論はないはずだ。
 出ました…太鼓持ちの常套句「責任政党」。で、読売が「責任政党の党首」と認定している、我が国の総理大臣のご答弁…

■「活動している地域は非戦闘地域」 小泉首相が答弁(朝日新聞)
 小泉首相は10日、民主党の岡田代表との党首討論で、イラク復興支援特措法が定める「非戦闘地域」の定義について、「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ」との説明を繰り返した。イラク全土に非常事態宣言が出され、米軍などが中部ファルージャで武装勢力に対して大規模攻勢を続ける中で、岡田代表は自衛隊が駐留するサマワの状況に関する認識を尋ねたが、首相は説明を避けた。

 首相はこれまでも「どこが戦闘地域で、どこが非戦闘地域か、日本の首相にわかる方がおかしい」などと、非戦闘地域の具体的な根拠を示してこなかったが、この日の答弁で、説明不足ぶりがさらに浮き彫りになった形だ。
 自衛隊が活動する地域は、自動的に「非戦闘地域」と認定されるんだそうですよ…知ってました?

■岡田克也が「まともに議論する気がだんだんなくなってくる」と言っていたけども、ほんと同情しますよ。私もあの答弁を聞いて、もう笑うしかなかったですもん。首相、論理が逆さまですよ…って、いちいち指摘するのも馬鹿馬鹿しくなる。

■こんないい加減な答弁をしても問題にされないのはなぜだ?人々を脱力させるこの「小泉マジック」のせいか。


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