最近、日本のイメージを西欧人に深く刻み込んだ映画が「ラスト・サムライ」である。 最後のサムライはトム・クルーズ(オールグレン)ではなく、渡辺謙(勝元)だ。 米国の愚か者を生まれ変わらせるほど、最後のサムライは完ぺきだ。 そのクライマックスは最後の場面の自決である。 自身の刀で自ら命を絶つサムライの最後の名誉を守った勝元は、舞い散る桜の葉を見ながら「完ぺきだ」という言葉を残す。 花の雨となって降る桜の美しさ、あれほど華麗に倒れるサムライの生がすべてそうだということだ。「死を名誉と見なすサムライの伝統が残っている」にはずっこけるものの、外国から見るとこんなふうに映るのかと学習。やっぱ「harakiri(切腹)」のインパクトがすごいんだな。
「花は桜、人は侍」という言葉は、日本の国民文学「忠臣蔵」のキャッチフレーズである。 忠臣蔵という300年前のサムライの復讐劇実話に基づく小説だ。 無念にも割腹自殺した主君の怨恨を晴らすため、下級のサムライ47人が秘密結社して臥薪嘗胆、ついに雪が降る冬の夜、仇の首を主君の墓前に捧げて皆が割腹する。 小説・芝居・映画・ドラマなどで数え切れないほど変奏されてきた日本人の永遠のベストセラーだ。
「ラスト・サムライ」の映像と忠臣蔵の伝説で日本を理解する西欧人には、12日の日本人9人の集団自殺は衝撃的に受け止められた。 インターネットで出会った若者らが車内で練炭ガスを吸い込んで死亡した事件を、「サムライの自殺文化がインターネットを通じて復活した」と騒ぎ立てた。 日本人の自殺は、死を名誉と見なすサムライの伝統が残っている半面、これを防ぐ生命尊重の宗教がないためと解釈される。
■ま、こういう誤解もいたしかたないのかな。海外で映える「ニッポン」ってのは「サムライ」なんだろうし、実際に、イラクにいる自衛隊も「武士道の精神」でがんばっている(by防衛庁)んだそうだから。
【参考記事】
自殺率:日本が先進国でトップに WHO調査(毎日新聞,2004/09/10)
日本の自殺者数が人口10万人あたりの比率に換算すると世界第10位で、旧ソ連・東欧圏を除く主要先進国の中では最も多いことが8日、世界保健機関(WHO)の調べでわかった。99年の前回調査では、日本は16.8人(96年)で23位だったが、今回は特に45〜64歳の中高年男子の自殺者数が急増した。また、世界全体の自殺者数は推計で年間約100万人に達し、「殺人や戦争の死者の総計を上回る」と指摘している。やっぱ「ハラキリ文化」かよ。
調査は、データが入手可能な99カ国を対象に直近の数字を比較した。日本は00年で、自殺者総数3万251人だった。それによると、人口10万人あたりの「自殺率」が最も多いのはリトアニア(44.7人、02年)で第2位がロシア(38.7人、02年)。日本は24.1人(男35.2人、女13.4人)で10番目。主要先進国では米国10.4人(00年)、英国7.5人(99年)、フランス17.5人(99年)、ドイツ13.5人(01年)など。
調査にあたったWHO精神保健局は、日本の自殺急増について「十分な分析はできていないが、不況による仕事でのストレスの増加が大きな理由のようだ。また、日本の場合“腹切り”の伝統があるように、自殺に寛容な文化的土壌もあるのではないか」と話している。
■ちなみに、中央日報の記事において、韓国の自殺率の高さ(24.0人)に触れ、「死を美化する伝統もなく、生命尊重の宗教が競いながら栄えた国としては意外」としたうえで、次のように言う…
何よりも「社会的他殺」の疑惑を払拭できない。 自殺を社会的現象と分析したエミール・デュルケムは「自殺は助けてくれという最後の訴えだ。しかしあまりにも遅すぎる」と語った。自殺は「社会的他殺」と見ないと、やっぱまずいんじゃないか。死んだ彼/彼女たちの訴えを汲み取れなかった社会の責務があるわけで。
■今回の集団自殺についても、なにやら「インターネット」や「ネット社会の闇」を犯人にして、「自殺サイト」を規制しようという話になっている。ネットは、「集団自殺」を達成するための「ツール」に過ぎないのであって、彼/彼女たちのメッセージから目をそらす口実になっている。
■「集団自殺」はインパクトが強いがゆえに、こういった見方をしてしまうのかもしれない。もちろん、「自殺サイト」を容認するつもりはない。が、「自殺サイト」経由の自殺者は、全体の何パーセントだというのか?
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