2004年10月28日木曜日

新聞社説:香田証生

■イラクで拉致された香田証生(こうだしょうせい )さん。周囲から止められたのに、遠足気分でイラクに出かけていった(本人いわく「自分探しの旅」)。ザルカウィが率いるイスラム過激派ってわけで、絶望的状況にあり、同情するんだけども、彼の行動自体は弁護しようがない。そんな状況で、社説はどう論じたか?

■朝日新聞/社説「日本人人質――救出に手立て尽くせ」
 それにしても、今回は人質になった香田さんの行動に疑問が多い。

 前の3人は、それぞれイラク国内でボランティアや取材活動にあたっていた。香田さんの方は、そもそもイラクに向かった理由がはっきりしない。

 イラク入り直前に宿泊したヨルダンのアンマン市内のホテルの従業員に、「観光客だ」と語ったという。同宿の日本人には「イラクに1週間ほど旅行に行く」と話したそうだから、旅行のつもりだったのかもしれない。

 もしそうなら、状況認識があまりにも甘い。経験豊かな日本人ジャーナリストたちでさえ「今のイラクは危険すぎる」と現地入りを見合わせている。海外各地を回っている香田さんのことだ、現在のイラクがいかに危険な場所か、よくわかっていたはずだ。

 アンマンで、周囲の人はイラク行きを思いとどまるよう説得したが、制止を振り切ったという。それがこうした結果になったことは悔やまれる。


■毎日新聞/社説「日本人人質事件 政府は無事救出に全力を」
 もちろん外務省は邦人の身の安全に神経をとがらせている。外務省はイラクからの退避勧告と渡航延期を継続して呼びかけている。イラクが危険なことは、みんながよく知っているはずだ。

 香田さんは数カ月前に日本を離れたというから、イラクの状況を十分認識していなかったのかもしれないが、ヨルダンでイラクは危険だから行かない方がいい、と忠告を受けていたという。にもかかわらず、イラク入りしたとしたら、軽率のそしりを免れない。無謀な行動であると批判されても仕方がない。

 それでも、政府は香田さんを無事救出するように全力を挙げねばならない。小泉首相もそう指示した。政府には国民の生命を守る責任があるのだ。
 

■読売新聞/社説[邦人人質事件]「イラク民主化への妨害を許すな」
 政府が人質解放に力を尽くすのは当然だ。だが、外務省は、海外渡航情報で最も危険度の高い「退避勧告」をイラク全土に出していた。人質になった邦人は、制止の声を振り切ってイラク入りしている。認識が甘かったのではないか。

 一人の認識の甘さが、復興と民主化プロセスに深刻な影響を与えかねない。それが、イラクの現実である。
 先のイラク拉致事件では、「自己責任」論をいち早く出し、世論を誘導した読売…だけど、それは言う必要もなかったのか、思ったよりも控えめ。

■産経新聞/社説「邦人人質 テロに屈せず救出に力を」
 これまでの情報で判断する限り、人質になった青年は軽率のそしりを免れまい。ただ、どんな場合であれ、国民の命を守ることは国家の役目だ。テロには屈しないという原則を堅持したうえで救出に全力をあげてほしい。
 これまた控えめ。

■日経新聞/社説「テロの脅しには屈しない」
 それにしても人質となった香田証生さんはなぜこの時期にイラク入りしたのだろうか。あまり危険だとは思っていなかったとの情報もある。無謀な行動だったと言われてもしかたないだろう。


■東京新聞・中日新聞/社説「日本人人質 『市民が標的』の非道」
 気になるのは、誘拐された日本人青年が、危険を冒してイラクに入国した事情だ。つい最近、バグダッドでNGO代表が誘拐されるなど、イラク国内の緊迫ぶりは明白だった。日本人が相次ぎ誘拐された先の事件も周知だ。なぜ教訓が生かされなかったのか、点検が求められる。



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