2004年7月20日火曜日

武士道・紳士道

■産経抄
 赤い横長の「金日成バッジ」から青い縦長の「ブルーリボンバッジ」へ。羽田に降り立った娘さん二人の胸元のしるしが、一家の意思を如実に表していた。元米兵ジェンキンスさんの杖も、悪化した体調を示すものだったかもしれない。
 一家で日本永住という曽我ひとみさんの希望がかなえられたのは本当によいことだった。ひとみさんの家族思いの心にも感動を誘われた。多くの日本人が歓迎したのはその美しい家族愛に対してである。しかしジェンキンスさんを何やらヒーロー扱いした一部マスコミには首をひねらされた。
 こうして曽我さん一家の日本永住の夢はついに一歩を踏み出したが、しかし日朝間の難問題がこれで一件落着となったわけでも何でもない。いや、ジェンキンスさんの処遇でも、拉致の安否不明者十人の再調査でも、本当の問題解決はこれから一歩を踏み出すところなのだ。
 元米兵には自らの意思で脱走し、数々の反米行動を重ねてきた過去がある。米国が依然として訴追の方針を変えていないのは当然だろう。彼がまず治療に専念するのはいいとして、いつまでも「入院」で事態を回避していてはいけない。
 健康の回復次第、進んで出頭して前非を悔い、過去を償うべく裁判を受ける意思を示してもらいたい。そうであってこそ「司法取引」の道もひらかれるだろう。武士道の国に来たのだから紳士道を示すことが義務なのではないか。
 曽我さん一家の来日で、これから日朝国交正常化交渉の再開が焦点となってくる。しかし安否不明十人の再調査ではまだ何一つ展望が見えているわけではない。小泉首相はしきりと先を急ぐやに見えるが、決して焦って下さるな。ここは腰を落として、じっくり構えてもらいたい。
 義理のある北朝鮮の情報を流すのが「武士道」「紳士道」か?


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