2004年7月13日火曜日

新聞社説/参院選

■参議院選挙の社説をよかった順番に…


■毎日新聞/社説「参院選 不信が小泉政治を直撃した」
・長期政権のおごりと高い支持率への慢心に、強く反省を促したい……今回、有権者が示した意思は、まずそれであろう。最大争点だった年金問題について、自民党は選挙戦終盤、先の国会で民主党が自民、公明両党と年金一元化に関して協議する3党合意を結んだことを理由に、「約束を守らない」と猛反論を展開した。しかし、政府・与党が抜本改革とは程遠い内容の年金改革関連法を強行採決し、重要データを後出ししたことを有権者は忘れていなかった。

・自衛隊のイラク多国籍軍参加問題も同じだ。著しい説明不足と国会を軽視した乱暴な手続き。その上、「批判する方がおかしい」と開き直る首相の姿にあぜんとした有権者も多かったに違いない。その意味で、「人生いろいろ」と会社員としての勤務実態が疑わしいのに厚生年金に加入していた問題に軽口をたたいたのが潮目だったと思われる。確かに首相は「ワンフレーズ政治」と揶揄されながらも分かりやすさを売り物としてきた。だが、有権者が不信を募らせているさなかに一国のリーダーが語る言葉として余りに軽く無責任と有権者に映ったはずだ。

・首相への期待は「自民党をぶっ壊す」の言葉に象徴される既得権益を打破する改革にあった。パイを分配しさえすればよかった旧来の自民党政治から決別する姿勢に国民は喝さいを送ったのだ。ところが、道路公団改革など一連の改革は自民党の族議員と妥協し中途半端なものに終わった。首相は本当に自民党を壊したのか。多くの有権者が「普通の自民党首相」になったと感じていただろう。しかも、今後、政権維持を図るため、首相が今以上に与党に頼らざるを得ないとすれば、それもまた大きなジレンマとなる。

・粗っぽい小泉首相が引き立て役となって、「ひたむきに」という民主党の岡田克也代表のきまじめさが評価された面もある。政権獲得へ向け、民主党が大きなステップを踏んだのは確かだ。今後、「小泉内閣打倒」を掲げ、早期の衆院解散を求めていくだろう。しかし、参院選は明確な政権選択選挙でなく、与党におきゅうを据えるため有権者が比較的気安く野党に票を入れやすいという指摘は以前からある。国会でリード役となり、選挙戦で訴えてきた年金の一元化を実現できるのか。本当に自立・対等の日米関係を構築できるのか。有権者は次の衆院選に向け、民主党の政権担当能力を一段と厳しく吟味していくはずだ。

・衆院のチェックという役割が薄れて一段と政党化が進み、衆院のコピーとなった参院が本当にこのままでいいのかどうか。今回は、その存在意義が問われる選挙だったが、参院をどうすべきか積極的に提言した政党はなかった。
 バランスがよさげ。


■日経新聞/社説「首相は厳しい民意を謙虚に受け止めよ」
・年金問題と多国籍軍参加問題に共通するのは、中身もさることながら決定のプロセスが不透明で、民主的手続きや有権者への説明が不十分だったということである。こうした手続きや説明こそ有権者が重視し、敏感になっていることを与党は肝に銘じるべきである。

・自民党にとって公明党との選挙協力は痛しかゆしである。確かに選挙区では自民党候補者を押し上げるが、その見返りに「比例は公明党」と呼びかける候補者がいるため、比例代表の自民党の得票は伸び悩む。反創価学会系の宗教団体が自民党と距離を置くのも痛手である。

・民主党は大きく躍進し、推薦候補を含めて自民党を上回る議席を獲得した。次期衆院選での政権交代に向けた足場を築いたといえよう。菅直人前代表の辞任、小沢一郎氏の代表辞退で急きょ登板した岡田克也代表は民主党の新しいリーダーとして有権者に認知された。地味だが、まじめで若さと安定感がある岡田氏の個性は日本の政治にとって貴重な存在である。岡田民主党の課題は政権交代に向けて党内の結束を維持し、次期衆院選では郡部でも勝てる有力な候補者を発掘することである。政権交代が近づけば、政策面でもより説得力のある整合性のとれた内容が求められる。

・今回の選挙は参院の存在意義が問われた選挙でもあった。権能も選挙制度も衆院と似たり寄ったりの参院のあり方には批判も強い。選挙区の一票の格差についても最高裁から違憲の警告が出ている。二院制度の下で参院はどのような役割を果たすのがいいのか、憲法改正を視野に入れた抜本的な論議が必要である。
 まずまず。


■東京新聞/社説「参院選 自民に厳しい審判 失速するか小泉政権」
・投票した有権者半数の意思をもって選挙結果を論評するのは忍びないが、おや、と思わせたことがある。低めの投票率なら小泉自民党に有利という下馬評の狂いである。

・三位一体の改革もいい、自己責任をいうのも勝手だが、市町村の財政は破綻寸前。見返りなしの公共事業削減は確実にボディーブローとなって網の目だった組織はズタズタだ。ある意味で“自民党をぶっ壊す”小泉改革が選挙結果に表れた。だが皮肉なことに、改革の道半ばにして政権は失速しかねない雲行きだ。

・その首相、テレビの開票速報を横目にマスコミ批判を展開した。自民苦戦の責任問題を問われても「逆風に立ち向かっていくのが首相の責任だ」と声を荒らげた。

・地方で会った有権者の言い分を代弁すれば、こうなる。虐げられてきた悔しい思いが鬱積していた。これも時代だからと我慢してきたのに、年金問題で火がついた。後出し情報、小泉流の「軽さ」も神経を逆なでした。説明もまるで人ごとだ−。

・最低目標の五十一議席に及ばなかったのは、矢継ぎ早の高速道路料金値下げ、社会保険庁長官の民間人起用、それに曽我さん一家の再会演出もが、有権者にさほど熱く受け入れられなかった証左だろう。

・二大政党の流れが定着し、共産、社民の両党は苦しむ。無理な選挙区にも比例票狙いの候補を立てる作戦は見直すときなのかもしれない。

・各党の消長はあれ、選挙結果が語るのは政権の終わりが見えてきたということだ。得意の手法が批判されては力も萎えようが、人材難ゆえに政権に居座り続けられたと言われては、首相の沽券(こけん)にかかわろう。政官業利権構造を絶つ。あの決意を急ぎ実行する時間はあるか。有終の美を飾るには、それしかないが。
 平均。


■朝日新聞/社説「参院選 自民敗北――裁かれた首相のおごり」
・年金改革法の廃案や自衛隊のイラクからの撤退を主張した民主、共産、社民3党の獲得議席数が与党と並んだことの意味は重い。抵抗勢力に妥協し、不十分に終わった道路公団民営化などへの有権者の不信も、選挙結果に表れた。

・小泉改革の方向性を、有権者がまるごと否定したわけではない。郵政事業の民営化や財政再建、2年以内の決着を公言した日朝国交正常化問題もある。しかし、構造改革一つをとっても、自民党との妥協を続けるなら、国民の心はいよいよ首相から離れていくだろう。

・参院でも2大政党の構図がはっきりした。共産党が大量に減らした議席が民主党に回った。民主の躍進は、政権交代に対する有権者の期待の表れでもある。この勢いを保てば、次の総選挙で政権交代がありうるかも知れない。だが、民主党は浮かれてはいられない。今回の勝因は、民主党支持者が増えたというより、小泉自民党に対する批判や不満のはけ口として民主党が選ばれた側面がまだまだ大きいからである。既得権の保護や利益誘導型の自民党政治では、日本はやっていけない。それに気付いた有権者の支持が民主党に集まったことも確かだ。

・しかし、比例区の当選者には、支持母体の労組出身者が多い。構造改革に党をあげて取り組めるかどうかがこれから問われる。安全保障政策や対米関係でも、主張に政権を担えるだけの説得力を育まなければならない。
 あまり残しておきたい文章はなかった。民主党には労組依存体質への批判がつきまとうけど…労働者の意見を代弁する政党になることってそんなに問題か?


■産経新聞/社説「参院選『二大政党』で活性化を 国づくりと国際協調で競え」
 遠くない将来での政権交代を予感させる時代を迎えたといえよう。日本の民主主義にとっては望ましい姿だ。

 戦後日本の政治はかなりの時期、第一党の自民党と第二党の社会党が相争う構図だったが、政権交代という視点からみれば、社会党の主張があまりにも現実離れしていたため、「疑似二大政党」の域を出なかった。また、自民党歴代政権も経済繁栄を最優先し、そのためには政治的安定が不可欠として、イデオロギーが絡む政治課題はすべて先送りしてきた。憲法改正や有事法制などは最も忌避されていた。冷戦下、日本の安全保障を米国に依存し、軽武装・経済重視路線が許された時代でもあった。

 しかし、二十一世紀初頭、日本を取り囲む内外の情勢は激変した。外交・安保面では北朝鮮などのミサイルや核疑惑国家が日本の平和と安全を脅かしている。国際テロの攻撃も新たな脅威となった。国際社会の平和と安全は日本にとっても重大な関心事である。

 日本の国際的な地位も冷戦時代と一変している。これまでは、故高坂正堯・元京大教授が「世界政治において適当な役割を拒否することによって経済の復興に成功してきた」(「海洋国家日本の構想」)と指摘したように、国際政治への積極的関与を躊躇していた。だが、世界第二の経済大国の繁栄を享受し続ける限り、負担は避けられない現実となった。

 これらの懸案を日本が乗り越えていくには、他者依存の残滓や自衛隊を国民の安全や国際的役割を果たしていくために十分活用できない仕組みをただしていかねばならない時代を迎えた。こうしたシステムを見直すことができるかどうかに明日の日本の命運がかかっている。

 その方策のひとつが、欧米でみられるような外交、安保、エネルギーなどの基本政策は共有するという二大政党制の確立である。政治的に対立しても国益のためには挙国一致の態勢を取ることが求められている。
 冷戦期から思考がストップしてる者にこんなこと言われたくないねぇ。「国益のためには挙国一致」といったトホホ感がすばらしい。


■読売新聞/社説「肝心なのは政治課題の遂行だ」
・政治に瞬時の停滞も許されない。だが、小泉政権が弱体化すれば、政策遂行能力の低下は避けられない。“死に体”となれば、重要な政策課題の推進が大きく停滞しかねない。そうした場合には、一刻も早く、政治体制を立て直すことが必要になる。もちろん、その場合、無用の混乱を生じ、政治空白を作ることがあってはならない。

・民主党は、先の通常国会で、年金の未納問題をめぐる混乱のため、党首が交代し、岡田代表の下で選挙戦に臨んだ。争点にすえたのは、年金改革問題を軸に、イラク派遣の自衛隊の多国籍軍参加問題などだった。年金問題で主に取り上げたのは、未納・未加入問題、首相の年金保険料肩代わりでの「いろいろ」発言などだ。有権者にアピールしやすい、と考えてのことだろう。それが、無党派層の獲得などに功を奏したとみられる。年金制度の一元化や、民主党が提唱する年金目的消費税創設にも言及したが、税率など、抜本改革にかかわる具体論には乏しかった。

・自衛隊の多国籍軍参加問題も、参加に反対し、自衛隊のイラクからの撤退を求めるなら、それに代わって、民主党はどうするのか。具体的で説得力のある提案はなかった。二大政党の一翼として政権を視野に入れる政党の責任は重い。今後は当然、責任ある政策の提示が求められる。

・共産、社民両党の退潮は、社会主義的な政策が成り立たないことを有権者も見抜いているからだ。年金問題では、両党の主張は、「負担は軽く、給付は厚く」というものだった。だが、少子高齢化の急速な進展や厳しい財政事情などの現実を前に、有権者の多くは、「負担増、給付減」は避けられないと考えている。安全保障政策や憲法問題などでも、両党の主張は、現実とは大きく乖離している。選挙結果から、共産、社民両党が減らした議席の分が、民主党に回ったのは明らかだ。自民党に対抗する野党勢力は、ますます民主党に一極化していく可能性がある。
 さすが御用新聞。反省を促すどころか政権を支えようと涙ぐましい努力をしている。共産党・社民党批判はいかにもって感じ。


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