国際決済銀行(BIS)が銀行の新たな自己資本比率規制(BIS規制)を決めた。融資など資産の質の優劣が正確に反映される算出方法に改める。銀行はリスク管理の一段の強化が必要だ。
自己資本比率は、銀行が持っている資産に対する自己資本の割合を示す。計算の際には貸出金などの危険度に応じ掛け目(リスクウエート)を乗じた「リスク資産」を分母にする。
今回の変更では掛け目を見直し、より実態に即した銀行の経営体力が測れるような国際ルールに改めた。例えば従来は企業向け融資の全額をリスク資産に算入していたが、新たな規制では不良債権処理を進めるほど資産が圧縮される。その分、自己資本比率が高くなり、貸し出し余力が増す。
また、大企業向けに比べ中小企業や個人向け融資のリスクウエートを軽くし、銀行の貸し渋り、貸しはがしを防ぐ。コンピューター障害や職員の不正行為、事務的ミスなどへの自己資本による備えも新たに加える。
現行のルールだと自己資本比率を引き上げるには、増資か貸し出しを抑制するしか手がなかった。しかし、二〇〇六年末から段階的に導入される新規制は、銀行の経営努力が自己資本比率の改善につながる仕組みだ。
国際業務を営む銀行に「8%以上」の自己資本比率を課す現行基準は変わらないが、新規制を機に金利収入に頼ってきた日本の銀行はリスク管理と営業の両面で改革を迫られる。
主要行は一昨年秋の金融再生プログラムに沿って資産の洗い直し、不良債権処理の加速が最優先課題だ。さらには個人取引(リテール)や貸出資産を増やさずに収益を拡大させる業務の強化を急がなければならない。
企業の合併・買収(M&A)や企業資産の証券化、協調融資のとりまとめなど手数料収入が柱になる投資銀行業務の拡大が不可欠だろう。
監督当局の役割も重要である。銀行が不良債権処理で納めた税金が将来に還付されるのを見込む「繰り延べ税金資産」について金融庁は、自己資本への算入割合を段階的に下げていく考えだが、これだけでは不十分だ。
自己資本の質の向上に算入規制を課す一方、無税償却の拡充などで金融再生を後押しすべきである。
2004年6月29日火曜日
新BIS規制
新BIS規制 リスク管理の徹底はかれ(産経新聞)
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