政治と経済のリンク=知命
経済のグローバル化がいわれて久しいが、それが政治と経済のリンクを強めていることはあまり議論されていない。
経済がグローバル化するということは、世界経済の影響を受けやすくなるというだけでなく、世界中の政治の変動からまともに影響を受けるということでもある。9月11日事件であれ、イラク戦争であれ、日本経済は直ちに大きな影響を受けた。こうした状況は今後も変わらないだろう。
そうだとすれば、当面、世界のどのような政治情勢に気を配ればよいのだろうか。まず何よりも米国の大統領選挙の行方が大きなポイントであることは、いうまでもない。ブッシュ大統領が勝てば、おそらく経済政策はさほど変わらないだろうが、ケリー候補が勝てば、ドル安と貿易摩擦を仕掛けてくることは確かだし、イラクや北朝鮮のつけを各国にまわしてくることも十分考えられる。日本経済はかなり深刻な影響をこうむることになろう。
次に、アジアの中では韓国とインドネシアの政治情勢が気がかりである。今年はアジアが選挙の年だが、マレーシア、フィリピン、台湾と意外によい結果がでたものの、韓国の選挙は政治の安定をもたらしていないし、インドネシアの大統領選挙は大きな不安要因である。とくに、インドネシアは日本の官民が巨大な債権を有しており、密接な政治経済関係を保っているだけに、その政治が不安定化したときの影響は計り知れない。
さらに、中東の政治情勢はいっそう深刻さを増し、いつテロや暴動が起きてもおかしくない状況にある。しかも、それが米国の政治に影響を及ぼす可能性が高い。当面、米国、アジア、中東の政治情勢からは目が離せないといえよう。(知命)
毎日新聞 2004年6月25日 東京朝刊
東アジア共同体=猷
つい先日、「東アジア共同体」の実現を目指すシンクタンクのネットワークとして東アジア共同体評議会(中曽根康弘会長)が旗揚げした。
ここで東アジアとは、ASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国に日・中・韓3国を加えたものをいう。この共同体の実現を望む声はマレーシアをはじめ、ASEAN諸国から盛り上がっている。中国はこれに意欲的にかかわり、今や推進役になろうとしているが、日本もようやくその体制作りに入ってきた。
こうした国家戦略を立てるために代表的なシンクタンクのほとんどが参加するのは日本では初めて。このまとめ役を果たしたのは「日本国際フォーラム」(今井敬会長)で、シンクタンクを軸に産・学・官が協調して国の戦略を立てるという体制は今後の新しいモデルになり得よう。
この評議会は研究成果を日本政府のほか東アジア各国の政府にも提言する。これが実を結ぶには政治がどうかかわるかが重要だが、北朝鮮や台湾の問題、米国の出方、豪州、ニュージーランドへの配慮などの難題がある。政治の姿勢があいまいになるのもそのためだが、世界もアジアも激しく流動している。手遅れによる損失は計り知れない。その意味では東アジア共同体が何を目指し得るのかをもっと掘り下げる必要がある。欧州の「EU(欧州連合)への道」と比べ、東アジア諸国は文化や経済の基盤の違いが大きい。
しかし逆に、力の論理よりは多様性を尊重し、連帯を大切にする心やさしい風土がある。東アジア諸国の歴史的、文化的な厚みを生かした新しい行動原理を軸に、東アジアらしい共同体が生まれるならば、世界全体にとっても喜ばしい。そういう志を深め、実を結ばせることが国としての本当の戦略であろう。(猷)
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