2003年12月8日月曜日

産経「戦争を起こさせた側にも責任」

■産経抄(産経新聞・12月8日付け)
「しかしもし戦争を起こした側に責任があるとすれば、戦争を起こさせた側にもそれがあるはずである。」

イラク派兵推進派にうんざりしているせいか、最近、産経ネタが多い。まるで朝日新聞を執拗に叩いているネット右翼みたいだ。

まず、前置きとして産経が大好きな「大東亜戦争」についてでてくる。

「日本が大東亜戦争に駆り立てられた動機ははたして『侵略』にあったのか。明治維新によって近代国家になった日本にとって、ロシアの南下政策は大きな脅威であり、アジアへ進出した西欧列強も日本をおびやかした。」
「マッカーサーは日本は自衛戦争をしたと述べたのだが、そういう日本の『戦争責任』がいまもしばしば論じられている。執拗に責任を追及するものがいる。しかしもし戦争を起こした側に責任があるとすれば、戦争を起こさせた側にもそれがあるはずである。」

いかにも産経って感じの文章である。
まず、他の先進国が全部正しくて、日本やドイツだけが悪い、なんて見方をする人間はいないわけだし、そのことと被占領国に対して「あれは自衛だったから正当だ」と言うのは全く別問題である。被占領国には「戦争を起こさせた責任」は無いのだからね。
まぁ、こういう言動をして韓国・中国に蒸し返してもらわないと、自らのアイデンティティを喪失することになるからな。そのことでどれだけ「国益」を失っているか自覚して欲しいものである。

たぶん、こういう前置きをしたのは反米保守派の心理をゆさぶるためだろう。次の文章でイラク戦争の正当性を説く。


「イラク戦争を見ればはっきりするだろう。先制攻撃をしたのはアメリカだが、ではその単独行動主義の戦争責任だけが責められるのか。サダム・フセイン政権のクルド人虐殺やテロ支援や独裁や専制に問題はないのか。戦争責任をいうなら戦争を起こさせた側にもあるというべきだろう。」

大量破壊兵器が見つかんないから、困ってんだろうなぁ…
でもね、戦争を起こさせた側にも問題がある、って詭弁だと思わないのかね?誰もサダム・フセインが正しいなんて言ってない。これは誰もが認める共通認識だ。
しかし、だからと言って、国際法や国連を無視して武力行使に出てもよいと認めるわけ?国際的なルールを無視してもよいという理屈が認められるなら、アメリカの暴走をいったいどうやって止めると言うのか。超大国アメリカが恣意的に「ならず者国家」を排除できる。これは明らかに「国連憲章の原則への根本的挑戦」(アナン国連事務総長)なのである。


じゃぁですね、そっちがそう来るのなら、「テロ」に関しても同様のロジックを当てはめてみよう。つまり、「テロを起こさせた側にも問題がある」と。

パレスチナ問題におけるアメリカのスタンスがイスラエルに偏りすぎであるからテロが起きる。イスラームに対する偏見がテロを起こす。世界的な覇権を獲得することによって、暴利をむさぼるからテロが起きる。あるいは、アメリカが推進するグローバリゼーションへの反発がテロを起こさせる…などなど。

こういうことも指摘しないと、フェアーじゃないと思いませんか?

武力行使のような近視眼的な対策ではなくて、テロを生む原因の除去という地道な対策こそ、真の意味での「テロとの戦い」だと思うのだが。


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