��月11日付けの社説を暇だったから何となく出来心で取り上げてみる。
一つは「性教育」というタイトルのもの。中学生に避妊薬のピルを勧める性教育冊子「ラブ&ボディBOOK」が絶版となり、在庫は回収されることになった。これに関して、産経おおはしゃぎ。
“厚生労働省所管の財団法人がピルを扱う製薬八社からの支援金などで作製したもの”として、ピルの有益な点ばかり取り上げていると批判。“中学生に「産む、産まない」など性の自己決定を求める”“性器に関する興味本位的な内容が含まれていた”“性の乱れを助長するだけ”“中学生にも性教育は必要だが、それは正確な性の知識を教え込むものでなければならない”などなど…
どうやら、産経新聞はコンドーム派のようで(笑)、ピルでは、エイズや性感染症などには対応できない、と力説している。一体どのようなものが、興味本位ではなく、性の乱れを助長しない正確な性の知識であり、どう教育すべきかを聞きたいもんだ。性教育の重要性は誰だってわかっている。女性主導のピルに対しては感情的になって批判するが、それ以外では曖昧な記述で逃げているように思える。
で、ピルから急に“厚労省は十代の人工中絶増加に歯止めをかけるため、幼いころから男女の違いを認め合う意識を育て、責任ある性行動をとる学習プログラムの開発も計画している。これも、今までの行き過ぎたジェンダーフリー教育に歯止めをかけるものとして、評価したい”という主張が出てくる。
何ともよくわからない文だ。“十代の人工中絶増加に歯止めをかけるため”と“男女の違いを認め合う”“ジェンダーフリー教育”にはどのような因果関係があるのか?妙ちくりんな飛躍は理解不能。産経的な論理をマスターしてない私にはわからないんで、中抜き部分を説明してくれい。
結局、“行き過ぎたジェンダーフリー教育”という語を言いたいだけのような気がしなでもないが…
そして、“伝統的な家族観を否定し、男女平等の理念をはき違えた内容であり、国が音頭を取って推奨することではない”と締めくくる。
保守派は矛盾を抱えている。そんなに伝統的な家族観(何だそりゃ?)というものを大事にするのなら、今一番壊そうとしてる小泉政権や竹中平蔵、そして島田晴雄なんかを批判してはどうか?市場原理主義に基づく、雇用の流動化、規制緩和や育児・家事サービスの市場化による家族機能の代替は、育児や家事を担ってきた主婦を労働へ駆り立て、伝統的な家族を崩壊させやしないか?“伝統的家族”にとっての最大の脅威は、ピルでも行き過ぎたジェンダー教育でもない。
そんなに“伝統的家族”とやらを守りたければ、世の流れに逆らい“抵抗勢力”となって、「保育サービス反対!」「女性の社会進出反対!」とでも叫ぶ勇気を持ちなさい。批判しやすいところだけ、批判する。これでは何とも御都合主義的ではありませんこと?
2本目は「治安悪化」。次のような記述で始まる。
“マブチモーター社長夫人らの放火殺人など真夏に入って、全国各地で凶悪事件が頻発している。肌で感じる「体感治安」の悪化は深刻さを増すばかりだ。治安回復は、一刻の猶予も許されない状況にある。”
別に真夏に入って凶悪事件が頻発してるわけではないだろう?世間を騒がす凶悪事件ってのは残念ながら今に始まったことではない。肌で感じる“体感治安”は増すばっか…って、さすがに、それがあくまでも“体感”であり「主観的・感情的」であって、「客観性はない」と自覚しているわけね。そういう根拠のない“治安悪化”で不安を煽るのが保守派の役目ってわけでして、もはや毎度のこと。少年の凶悪事件が起きれば、少年犯罪が増加しているとわめき散らすし、精神病患者がしても同じ。
でも、何故だか今回はマブチモーターでいきなり外国人登場。(賢明な読者なら治安悪化と聞くだけで「外国人が出てくるな」とわかるかもしれない、お決まりのパターンですからね。)
“警察庁がまとめた今年上半期(1−6月)の犯罪情勢によると、刑法犯の認知件数は、約百三十五万千七百件と前年同期で約六万三千五百件も増え、戦後最悪の記録を更新した。治安悪化の大きな要因の一つになっている来日外国人犯罪の増加にも、歯止めがかかっていない”
これまたおかしな論理だ。日本人の犯罪はどれくらい増え、来日外国人犯罪はどれくらい増えたのか?「治安悪化→外国人のせい」とする“わかりやすい”論理は日本に限らず保守派の常套句だし、どこぞの政治家が好んで使うところをみると受け入れられやすのだろう。が、あまり賢い説明だとは思わない。
“入国管理局と連携し、不法外国人の入国阻止や不法滞在者の摘発強化が緊急を要している”
そりゃそうだろう。でも、この社説では正規で入国した外国人と不法入国した外国人の区別をしていない。一様に「外国人→日本に来て悪いことばっかしやがる」という論理を使っている。これでは外国人に対する偏見を助長するだけだ…それが目的とあらば、どうしようもないが。
このような“体感”でプロのジャーナリズムが語られるのは何とも残念だが、いいかげんな文章ばかり書いている者としては多少は心が救われる面がある。
0 件のコメント:
コメントを投稿