2003年6月23日月曜日

マニフェスト

毎日新聞/社説「マニフェスト 政治を構造改革する好機」
 先週、小泉純一郎首相が「マニフェストを訳せば公約。カタカナに直せば新しく見えるというのはよくない」と語ったそうだ。その通りである。
 選挙で政党が、実現を目指す政策の数値目標や財源、期限を具体的に示すのが、マニフェストとされる。要するに厳格な選挙公約だ。次の選挙では、約束したことの達成度によってその政党が業績評価を受ける。これまた民主主義の基本で、当たり前のことだ。
 だが、この当たり前のことが実行されていないから、マニフェストの必要性が叫ばれていることを理解すべきだ。
 マニフェストは目新しいものではない。すでに96年の衆院選では新進党が具体的な数値や期限、財源を示して公約した。00年衆院選の民主党公約もそうだった。
 今マニフェストが注目されているのは、4月の統一地方選、とくに首長選で作成されたのがきっかけだ。それがあっという間に中央にまで広がった。それだけ今の政治が変わってほしい、その際マニフェストは突破口になり得るという世間の期待があることを見逃してはいけない。
 マニフェストとは、有権者と政党・政治家との間にできた溝を埋めるための方策で、民主主義成熟の政治改革運動だと考える。
 「ばら色」「総花的」とは日本の選挙公約の代名詞のようなものだ。政治家は選挙が終われば公約を忘れ、公約などどこ吹く風が実態ではなかったか。
 一政党から複数の候補が出て競う中選挙区制が長く続き、政党の公約軽視の風潮が生まれた。政権担当政党の選挙公約が政権の政策になりにくい官僚主導の弊害が消えない。これが、政党衰弱、政党政治の機能不全と指摘される政治体質の原因になっている。
 マニフェストを流行だけに終わらせないで定着させるには、政党は公約実行を日常活動の最高指針に位置付けることが必要で、「選挙綱領」「政策綱領」と訳される理由はここにある。
 英国のように、達成度を年次報告の形でそのつど国民に示すこと。これを積み重ねて次の選挙は業績評価投票を可能にする。
 べからず法といわれる今の公選法では、作っても「選挙中」配布できないという。改正が急務だ。
 選挙前の公約づくりがこれまでとはがらっと変わるから、各政党は日ごろ政策を調査・研究するシンクタンクが必要になる。
 重要なのは、第三者の役割だ。NPO(非営利組織)はじめ専門家や市民による比較や評価が欠かせなくなる。
 極端ないい方をすれば、政党は公約実現マシンに徹することだ。この積み重ねから信頼、支持を得る。マニフェスト運動は国民の政治参加の一つの方法でもある。この好機を大事にしたい。



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