2002年11月24日日曜日

「北朝鮮」という鎮痛剤

 「そろそろ北朝鮮ネタも尽きるのではないか…」と期待を込め、そう思っているのだが、いっこうにやむ気配がない。連日、戦意高揚キャンペーンがメディアによって行われているのが現状だ。
 ほんと、うんざりする。

 社民党や共産党、あるいは左派メディアが拉致疑惑に関しては権威失墜している。左派は沈黙し、右派は勢いを増し、北朝鮮報道は暴走している感がある。
 これまでは、右派メディア(たとえば「産経新聞」「諸君!」「正論」「VOICE」「SAPIO」など。)がこのようなキャンペーンを担ってきたが、今ではほとんどのメディアが雪崩を打って追随している状況だ。北朝鮮言論バブルである。

 この戦意高揚キャンペーンに「異議あり」と言おうものなら、たちまち「国賊」扱いを受ける。たとえば、「5人を返さないのは約束違反ではないか」という意見があるが、「世論を二分させるようなことを言ってはいけない。北朝鮮が得するだけ」と言論封殺がなされる。

 昼のワイドショーを見てみると、事態はさらに深刻だ。何回も何回も繰り返し、金正日はいかにダメな指導者であるかを報道し、一方で北朝鮮国民がいかにひどい状態にあるかを報道している。どれも同じような報道ばかりだ。元工作員だとか元北朝鮮幹部、元ボディーガードと名乗る人々が連日登場し、北朝鮮のひどい状況を語る。このような一面的な情報が、毎日繰り返される。まるで北朝鮮の洗脳にも似ていて、非常に不気味だ。

 国民は、北朝鮮が「とんでもない国家」であることは十分知っているわけだが、それでも飽き足りず、メディアは北朝鮮報道を止めようとしない。

 それでは、なぜ国民は「北朝鮮報道」に熱狂するのだろうか。北朝鮮が脅威的な存在であるから、とか、「国民が飢えていてかわいそう」といった人道的なものでもないだろう。
 もしかすると、日本人は相対的な「優越感」「幸福」や「安心感」を得ているのかもしれない。人の幸福・不幸は他者との比較によって、はじめて生じる。とんでもない独裁者・金正日に支配され、貧困に苦しむ北朝鮮国民…そのありさまを見て、自分たちのおかれた状況がいかに幸福であるかを心のどこかで感じ、癒されているのではないか。
 「暗いニュースが多いこと」と「北朝鮮報道が加熱していること」には密接な関連があるように思える。「失われた10年」と言われるように日本経済はひどい状況だ。それを忘れ去るために「北朝鮮の惨状」が使わていたり、あるいは、そのはけ口として反北朝鮮感情が高揚しているのではなかろうか。いわば、「鎮痛剤」として北朝鮮報道の加熱がある気がするのだ。
 
 「北朝鮮報道」に日本の病が見える気がした、なんか嫌になる。


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