2002年1月1日火曜日

首相公選制QandA

たしか…2001年6月ごろの文章。
小泉内閣が発足した頃だ。サークルの新入生勧誘のために書いたもの。森喜朗の登場によって、「首相公選論」が脚光を浴びた時代ですね。最近ではすっかり聞かなくなってしまったけど。しょせん首相公選論は、政党政治の行き詰まりがもたらした一時的なブームだったのでしょう。
 ちなみに僕は首相公選制に対しては明確に反対だった。したがって、かなり恣意的な「QandA」になっている。
 
 ☆最近、「首相公選制」という言葉をよく耳にしませんか?
 首相公選制は中曽根康弘氏が1960年前後に提唱しており、別に新しいものではありません。彼は派閥政治の打破、「大臣待ち議員」制度を批判しました。しかし、当時は人気投票の恐れ、天皇制との関係などが指摘され、少数意見にとどまりました。
 しかし、約40年の月日を経た現在、「首相公選論は不死鳥のようによみがえる」と中曽根氏が言ったように、最大の盛り上がりをみせ始めています。「密室」という言葉のとおり、選出が不透明と批判され、終始不人気であった森内閣。国民主権と言われながら、自民党大派閥の一部幹部によって決められること、内閣総理大臣がコロコロと変わってしまうことへの不満、そして国民が何ら関与できない不満が首相公選への期待を高めたのでしょう。
 また、石原東京都知事、長野の田中康夫長野県知事、そして宮城の浅野史郎氏、三重の北川正恭氏、高知の橋本大二郎氏らなど、地方ではリーダーシップを発揮している(?)名物知事が現れており、それと首相を比較すると、いかに首相が情けないのかを嘆き、直接選んだからリーダシップが発揮しているのだとと考えたということもありましょう。
 首相公選論は小泉氏のかねての持論で、総裁選の討論会でも導入を主張していたし、首相就任後には私的諮問機関を設けて具体的検討に入ることを明らかにしていました。小泉総理は首相公選だけの憲法改正ならば国民の理解はえやすいとして首相公選制の導入にいよくをみせています。首相公選制は党派を超えて賛同する意見が多く、国民からも広く支持を集めています。今後も議論が高まりそうなんで、ここらで少し勉強しときましょう…
Q. そもそも首相公選制って何?
A. ものすごく短絡的に言ってしまえば、首相を直接国民が投票で選ぶこと。現在日本は議院内閣制度を採用しているため、国民は直接的には選べません。首相公選制については具体的な中身によって、その性質も機能も変わってきていますが、(例えば、公選首相に国会の解散権、法案の拒否権などの権限を与えるのか、国会は首相不信任案提出権をもつのか、国民は首相をリコールできるのか、任期は何年で再選は何回までか…など)。  
 最近の調査では大半の人が首相公選制に賛成していますが、どのような制度を想定して賛成と言っているのかはわかりませんし、まだまだ国民的な議論になっておらず、「国民が直接選べる」という耳障りのよい言葉に飛びついているだけという感は否定できません。
��.首相公選制のメリット、デメリットは?
��.まず、首相公選制の長所は…
・国民が直接選べることによって、選挙結果に対し国民が責任と義務を持ち、政治への参加意識も高まる、国民の政治的レベルの向上(?)
・首相が政争の影響を受けず、人事権などの権限を行使できる。
・長期的に選挙区の利害にとらわれない日本としての国家戦略を実行できる。
・ 明確な三権分立となる。
・ 政治と一般市民との距離感が縮まる。
・ 首相選出前に政策・政治姿勢がはっきりする。
 そして、短所は…
・ 人気投票になり、首相の資質がない人物が選ばれる可能性がある。
・ ポピュリズム(大衆迎合主義)になりやすい。
・ 独裁政治につながる危険性がある。
・ 議会との一体性がないため、大きな改革がやりにくい。
・ マスコミによってますます国政が左右されやすくなる。
・ 公選された首相の支持政党が国会で過半数をとれない場合、もしくは首相と国会の意思が対立した場合に、政治が行き詰まる。
・ 総与党化現象してしまった場合、国会の空洞化の恐れがある。
・ 国会議員がますます矮小化し、族議員化する。
・ 国会がますます形骸化されていく。
��.首相公選制にするにはどうすればいいのか?
��.憲法において日本は議員内閣制であることが明記してあります。憲法の条文を見ると、特に憲法次の部分が引っかかってきます。
『天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する(6条)』
『内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する(67条)』
 そして憲法を改正するためには、国会議員の衆参両議院において、総議員の3分の2が賛成して国民に対して発議し、その上、国民投票によって過半数の賛成を得なければ憲法の改正ができません。改正しなくてもお得意の拡大解釈などを使えばできないわけでもありませんが、現実的ではありません。首相公選制にするにはやはり憲法の改正が必要です。日本の場合、憲法改正というとどうしても憲法9条問題が出てきてしまい、理性的な議論ができなくなっているという現実があります。 
��.実現のその可能性は?
��.「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調、亀井正夫会長)が実施した国会議員アンケート(衆参両院議員のうち48.3%が回答)では、全体の54.1%が首相公選を「前向きに検討すべきだ」と答え、「現時点では必要はない」の30%を大きく上回りました。自民党では「前向き」が42.6%にとどまりましたが、民主党では73.6%にのぼっています。自民党では国会議員のみが持つ、総理大臣指名権を放棄してもよい、とはなかなかいかないようです。しかし、YKKをはじめ、若手議員にも賛成論が広がっています。民主党では嶋山由紀夫代表が賛成派で、彼は改憲の大きな理由として首相公選をあげています。菅直人幹事長も前向きに検討すべき、としています。公明党の支持母体である創価学会の池田大作名誉会長も首相公選には前向きです。これに対して、代表的な反対派は小沢一郎氏です。イギリスの例を挙げて、政治家の指導力は直接投票でないとリーダーシップが発揮できないというのはおかしいと言っています。共産党は以前から独裁的な強権政治の基盤になる危険があるとして反対していますし、社民党も議院内閣制を形骸化し、行政優位の官僚制や危機管理対策をますます強めることになる、として反対しています。共産党、社民党の両党には、首相公選論で憲法改正の呼び水となり、九条改正に道を開くのではないかという警戒感があります。結論を言ってしまえば、どの世論調査を見ても、国民の過半数の賛成は得られるのは間違いないようです。しかし、国会議員の3分の2は現段階では無理のようです。
��.首相公選制をやっている国は?
��.ありません。少し前まではイスラエルが首相公選制を採用していましたが、有権者が首相選挙と国会議員の総選挙では異なった党派に投票するため、政治の安定を確保できなくなって廃止となりました。しかし、イスラエルと日本では政治の状況が全く異なるので、単純にイスラエルでダメだったから日本でもダメということにはなりません。
��.首相公選制の場合、元首はどうなるのか?
��.まず、何をもって「元首」と称するかが明確ではないように思えます。対外的に代表権を持つことが元首と規定するならば、大統領制にしなくとも、現在の憲法のもとでは元首は既に首相であろうと思います。また、元首という概念は、歴史的かつ相対的な概念とも考えられます。外務省などは外国に対して、元首は天皇であると説明しているようですし、一般的にも何となく「元首」は天皇と思われていますが、仮に天皇を「元首」と称したとしても、憲法に規定されていること以外のことを天皇は行うことはできません。もともと日本では天皇制は権威の象徴であり、天皇はまさに歴史を通じた日本の象徴であり、その天皇が現世の代表としての公選首相を任命しても何ら問題は生じません。また、三権分立の原則に立てば、首相は国家の統治権のうち行政権を担当する最高責任者にすぎず、直接主権者である国民に選ばれたといっても、君主制の国では国家元首になることはないのです。国家元首の問題、選ばれた首相が天皇制の廃止を主張したら…など細かい議論をしだしたらきりがありませんのでここでは省略させてもらいます。いずれにせよ、このことが首相公選制の有力な反対意見にはなりえません。
��.現状制度の改革で解決できる処方箋はないのか?
��.例えば、内閣機能の強化が考えられます
・内閣法改正で首相の権限を明確にし、官邸機能を強化する。
・官僚と与党各部会による縦割り型、部分利益の積み上げ方式を改め、首相/内閣が優先順位をつけ、政策の 総合性・整合性・戦略性を確保する。
・与党の実力者全員が内閣に入り、政府・与党を名実ともに一体化させる。
「議院内閣制」が正しく機能すれば、議会多数を持つ与党が内閣を構成している以上は、本来首相は強力に政策を推進できるはず。
次に首相選出プロセスの透明化があると思います。
・総選挙を実質的に次期首相を選ぶ選挙とする。(選挙後の話し合いでは決めない)有権者は政党を選ぶことを通じ、各政党は、首相候補者を明確にして党首を首相として選ぶ(間接的首相公選制)但し、完全小選挙区制に制度改革する必要あり。(現在は比例代表並立制)
・総裁/党首選挙の活性化。情報公開の徹底と政策論争の活性化と公約の実施状況をフォローアップ・公開し、民意を問うシステムを確立する。
 その他、憲法15条は国民の公務員選定・罷免権を規定していますので、国会議員、さらには首相のリコール制度を容認することもできるのではないでしょうか。リコール制度を導入すれば、国会議員も、全体の奉仕者たる責務に目覚めてくれるのではないでしょうか…


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