2004年12月9日木曜日

社説:横田めぐみ遺骨・別人

■産経の「別人の遺骨 もはや対話の選択はない」や読売の「“遺骨”は別人―『北』の愚行が自ら制裁を招く」 というのは読まなくても内容がわかるだろうから省略。

■別人の遺骨を渡した北朝鮮が卑劣ってのは言うまでもないわけで、注目はその他の新聞社が経済制裁についてどう論じたか?

■朝日新聞/社説「遺骨の嘘――総書記はこの怒りを聞け」
 横田さんら拉致被害者の家族会は、経済制裁の即時発動を求めた。政界も世論も、制裁実施論にさらに傾くだろう。 北朝鮮に対してはまさに「対話と圧力」である。まず制裁ありきではいけないが、制裁もまた選択肢の一つであることを、金総書記は忘れてはいけない。
 おとなしめ。

■毎日新聞/社説「ニセの遺骨 何という卑劣な仕打ちだ」
 5月に小泉首相が訪朝した際に金総書記に約束した食糧などの人道支援も、残りの12万5000トンの提供を見送るのは当然である。国民がそれを許さない。
 「対話と圧力」という北朝鮮への対処方針のうち、こんなことでは「対話」が成り立たなくなる恐れが出てくるだろう。

 だとすると、北朝鮮に対して経済制裁に踏み切るべきだとの声が高まるのも自然のなりゆきだ。拉致被害者の家族会らは、政府に強く制裁を求めている。北朝鮮の今後の出方によっては、改正外為法や特定船舶入港禁止法の発動を検討すべきだろう。
 日朝協議をこれからどうするのかも、大きな課題となりそうだ。国民の北朝鮮への不信感を取り除けないなら、日朝実務者協議を重ねても意味がない。外務省は北朝鮮との協議のあり方を再検討しなければならない。
 経済制裁を検討すべき、でストップ。

■東京(中日)新聞/社説「でたらめも度が過ぎる」
 それにしても、日本政府は甘く見られたものだ。一国の首相が二度までも国交のない国を訪問しての結果がこうである。特に二度目の首脳会談は、外交ルートをはずれた怪しい経路でセットされたという。その会談で小泉純一郎首相は、食糧や医薬品を提供、経済制裁を発動しないと約束した。こうした融和策が、恐れるに足りないと侮られたに違いない。

 被害者五人については、ようやく家族ともども故郷に落ち着いた。政府は他の十人の被害者についても、同様に原状回復ができるよう全力を傾注すべきだ。経済制裁をはじめあらゆる手段を念頭に。


■日経新聞/社説「不誠実な北朝鮮へ経済制裁を視野に」
 経済制裁はそれ自体が目的ではない。目的は拉致問題の解決である。そのために何が有効かを多角的に考える必要がある。経済制裁は紛れもなく選択肢の一つである。制裁論者は何もしなければこれまでのような不誠実な対応の繰り返しになると考える。制裁消極論者は効果に対する疑問があると考える。日本だけが制裁を実施しても、中国、韓国との足並みがそろわない限り、効果は限定的との判断である。

 米国はすでに北朝鮮制裁を実施してきており、新たな制裁カードは持たないが、北朝鮮人権法には日本の拉致問題を明記し、厳しい姿勢を示している。中国、韓国も拉致問題に関する日本の立場には理解を示している。北朝鮮の不誠実な態度を改めさせるには中韓両国を通じた働きかけも欠かせない。
 ちょっと逃げた感もあるが、効果に言及したのは日経だけ。中国、韓国は拉致問題では動かないだろ、核じゃないと。

■どこも制裁は踏みとどまっているか。

■経済制裁というのは、ただただ「日朝平壌宣言に反する」という口実を与えるだけになる気がして、やはり避けたい。経済制裁を発動すれば、北朝鮮は軟化する…ってのは単純すぎる。なんせ、相手は「ならず者国家」ですよ?

■あるいは、経済制裁によって北朝鮮の態度が硬化した場合の対応は用意されているのか(効果がなかったら徐々に緩めるっていう情けない対応しかないような気が…それか不作為状態ね)。その場合、誰が責任を負うのか。それとも、強硬派は「対話の余地なし」としているわけだから、圧力以外の選択肢はなかったのだから、最善を尽くしたってことになるのか。

■日朝間の交渉窓口がなくなった場合、現実問題として多国間協議では核やミサイルだけが議題になるだろから、日朝間の拉致問題は置き去りにされる可能性があるんじゃないか。その時、拉致被害者たちは政府に「よくやった」と合格点を与えるだろうか。


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