2004年10月5日火曜日

郵政民営化論議

発信箱:郵政論議の怪しさ=与良正男(毎日新聞2004年9月20日)
 「踏み絵」人事ばかりに政界の関心が向かいがちなので、郵政民営化論議を少し整理したい。

 まず小泉純一郎首相を評価する声は極めて少ない。ブラジルでの歓迎ぶりに、首相がうるうるとなるのも無理はないと思うほどだ。一方、批判はいろいろで、次の三つに大別される。

 (1)目指す方向は間違っていないが、今の方針は中途半端。下手すると民営化しない方がましかも(2)中身より何より進め方が独善的(3)ともかく反対……これが混在しているのがやっかいなのだ。

 私の立場は(1)だ。確かに郵貯・簡保は安心でお得だが、郵貯・簡保資金が官の無駄な事業に流れ込む仕組みを縮小しないと、もっと大きなツケが私たちに回ってくる。

 ところが、今の方針は既に妥協を重ね、縮小どころか巨大な「国の借金(国債)引き受けバンク」として肥大化する公算が大きい。「改革の本丸」と首相が信じるなら、独善的と言われようと、もっと激しい改革をするのが筋だと思う。

 さて、ここで注意すべきは首相は(2)(3)には「反対なら私を代えればいい」と挑発するが、(1)には反論しないことだ。

 意図は明らかだろう。「賛成か反対か」の二者択一や、手法の議論に持ち込めば中身は二の次になる。しかも、「悪役の族議員」が反対するほど、今の方針が何だかいい案のように思えてきたりもするのだから。

 族議員側も私にはよく分からない。実は「郵政焼け太り」状態の現状にもう内心満足しているのではないかとさえ疑っているがどうだろう。

 人事騒動に惑わされてはいけない。大切なのは中身である。



発信箱:もっと怪しい郵政解散説=与良正男(毎日新聞2004年10月4日)
 今度の人事で自民党内には不満が募り、郵政民営化が実現できない可能性がある。そうなれば、小泉純一郎首相は衆院解散・総選挙に打って出るのでは……と、まことしやかに語る人がいるからである。

 この話も妙だ。

 考えてみよう。仮に郵政民営化を争点にして衆院選になったとする。しかし、賛成派も反対派も同じ自民党と名乗られたら、有権者はどんな選択をしたらいいのか。

 「小泉党」と「非小泉党」とに分裂して、それぞれ小選挙区でも比例代表でも戦うというなら別である。ただ、そんなエネルギーが今の自民党にあるようには、とても思えない。

 民主党も今の政府の民営化方針には批判的だから、小泉首相と組む可能性はないだろう。首相は「郵政で政界再編」とほのめかしたりするが、現時点では空想物語に近いと言っていい。

 今の政党の枠組みのままで選挙をする。まとまりのない自民党に有権者が愛想を尽かして、政権が野党に回るというのであれば、それは意味のあることになろう。だが、みすみす政権を手放すような解散など、自民党がするだろうか。

 だからして郵政解散論は、例によって反対派への脅しであると同時に、何だかすごい改革をしているように見せる仕掛けとさえ思える。これから来年にかけ確かに自民党内の騒動は続くだろう。それでも私は、首相も党も何となく妥協してケリがつくような気がするがどうか。そう。例によってである。

 そもそも、国民は「郵政民営化が国政の最重要課題」とは思っていない。


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