大量破壊兵器情報のずさん(日経社説7/16)
米英はイラクのサダム・フセイン政権が生物化学兵器を保有し、核開発を進めているとの情報を重要な根拠にしてイラクに攻め込んだ。だが、それら大量破壊兵器はいまだに発見されず、開戦前の情報は誤りだったことが確実視される。なぜそのような重大な間違いが起きてしまったのか。深刻な問いである。
この問いに答えるべく米国では上院情報特別委員会、英国ではバトラー卿が率いる独立委員会が調査を進めてきた。このほど報告をまとめ、相次いで発表した。
2つの委員会はそれぞれ、米国では中央情報局(CIA)、英国ではMI6を中心とする情報当局の情報収集、分析のあり方を厳しく批判している。
特に米国の報告はCIAを真正面から徹底批判し、極めて手厳しい。イラク国内に情報源を持たず亡命イラク人に頼りすぎたとか、イラク国内のスパイからの情報は1998年以降新しいものは何もなかったという指摘には驚かされる。CIAが「集団思考」の悪癖に染まっていたという批判も興味深い。みんなで渡れば怖くないとばかり、異論や疑問を無視、軽視していたという。
英バトラー委員会の報告も情報源が信用できるかどうか十分に調べず、二次的情報に依存していたと暴露した。
米英の報告ともその一方で、政府が情報当局に圧力をかけたり、情報をゆがめたことはないと指摘した。バトラー卿はブレア英首相が誠実に行動したとまで述べている。両委員会は要するに、情報当局が間違っていたからブッシュ米大統領、ブレア首相はその間違った情報を開戦理由の中に入れたまでであると言外に言っているように受け止められる。
だが、情報当局は政府の一部であり、大統領、首相の監督下にある。情報当局だけにすべての責任を押しつけるわけにはいかない。米英は大量破壊兵器に関する情報だけで開戦を決めたわけではないが、大統領や首相の対応の是非も問われるべきである。
米上院情報委員会は今後ブッシュ大統領がCIA情報をどう扱ったのかを中心に調査を続け、今秋発表する予定だ。これにも注目したい。
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