2004年7月24日土曜日

大学全入時代

大学作りすぎた!?志願者と入学者、07年度に同数に(読売新聞)
 少子化に伴って大学・短大の志願者数が入学者数と一致する「大学全入時代」の到来時期について、文部科学省は「2009年度」としてきた従来の試算を修正し、2年早い「2007年度」になるとの見通しを、23日、中央教育審議会の大学分科会に提出した。

 進学率が頭打ちとなる一方で、私立大を中心に定員増加が続いているため。実際には、人気校に志願者が集中するので「全員入学」とはならないが、不人気な大学の定員確保は一層困難になることが予想され、経営難に陥る大学が続出しそうだ。

 「大学全入」の試算は、1997年に旧文部省が当時の大学審議会に提出し、注目された。少子化は進行するものの、進学率が上昇するとの予測から、2009年度に志願者数と入学者数が70万7000人で同数になると見込んでいた。

 ところが、大学・短大進学率は1999、2000年度の49・1%をピークに伸び悩み、97年試算で前提としていた2006年度の「現役志願率(全高校卒業生のうちの大学や短大の志願者の比率)60%突破」が成り立たなくなった。

 一方で、私立大は定員を増やし続け、89年に約29万人だった私立大(4年制)の入学定員は、昨年度は約42万人にまで増えている。少子化に合わせた定員削減も鈍く、株式会社による大学経営参入など、かつて予測しえなかった事態も起きている。

 定員割れ起こしている私大は中国から留学生を引っ張ってくることに必死だ。


大学全入で本を探すと…まだ少ないね。


■日経新聞/社説「大学全入時代」へ競争条件を対等に(8/5)
 私立大学は学生数で日本の大学教育のおよそ75%を担う。その直面する危機を克服するには、今年から法人化した国立大学を含めて日本の高等教育全体が生き残りへ向けて公正な競争の仕組みを再構築し、社会の要請に見合う適正な大学の規模と質を実現することが必要である。

 今年から法人化された国立大学は独立した組織として経営や運営に大幅な自己裁量部分を手にした。

 公務員の身分から離れた教員らの研究成果を生かすため、技術移転機関(TLO)への出資や大学債による資金調達も可能になった。経常的経費を賄う運営費交付金は特別会計枠から裁量的経費となったが、共通の基準のもとで国の予算から支出される構造に変わりない。経営面での競争という点で国立大の優位性はさらに高まったというべきだろう。

 私学助成金との対比で見れば、国立大学への国の予算支出は私立のおよそ4.25倍に達する。学生1人当たりに投じる国費負担額では10倍以上になる。設置形態による大学の役割の違いがほぼ失われた現在、不適格校を退場させる仕組みの必要性の一方で、国の資金配分にイコールフッティング(対等な基盤)を求める声が高まるのは、日本の大学の現状に照らして当然の流れだろう。

「国私」不均衡見直せ

 「事後チェック」に軸足を移した国の高等教育行政は「第3者評価」を通して質の管理をすすめる一方、評価を資金配分と結びつける「競争的資金」の拡大を通して、教育と研究の質の向上へインセンティブ(誘因)を高めようとしている。

 国際標準の優れた研究を第3者評価で選んで重点的に国が資金を拠出する「21世紀COEプログラム」などがすでに動き出しているが、これらも適正な競争環境を通して大学の設置形態による資金配分のアンバランスを是正する仕組みが必要だ。

 国の助成についても機関助成より奨学金の強化を求める声もある。経営基盤の拡充に向けては学校法人への寄付税制の見直しによって民間資金の導入を高めることなど、制度面で大学間の競争基盤の落差を是正するための方策はほかにも多い。

 大学という市場には新たに株式会社設置大学という新顔も登場した。大学設置基準の適用を受けながら国家助成の対象にはならないこの大学はどう位置づけるのか。多様な設置形態の大学に学ぶ学生の公平な費用負担という観点に立てば、大学への国の資金配分の仕組みを根本から再検討することが必要である。

 日本の高等教育の望ましい規模と質を実現するために、公正な競争の条件は何か。「大学全入時代」の到来はその再構築を迫っている。
 国立大の大学院に席をおくものとしては耳の痛い話です。学部生時代もその恩恵を受けてきたし。

■東京新聞/社説「全入時代 大学が試される番だ」(8/23)
 河村建夫文科相は、先に日本記者クラブで行った講演の中で、大学入試の在り方について触れ「門戸は広くして出口は厳しくしてほしい」と注文を付けた。

 この指摘が当てはまるのは、全国から受験生が集まる、ごく一部の人気校だけだ。門戸を広げようにも、受験生の絶対数がこれだけ減っては、多くの大学や短大が定員割れを起こすだけだ。

 現に今春、日本私立学校振興・共済事業団の調査によれば、全国の私立大学のうち百五十五校(29・1%)が、また私立短大のうち百六十四校(41%)が、それぞれ定員割れとなった。

 私大ばかりでなく、受験生の減少は首都圏の国立大学をも直撃している。東京水産大と東京商船大が統合し発足した東京海洋大はこの春、第一期生にもかかわらず、海洋電子機械工学科で十二人の定員割れが生じ、二次募集を余儀なくされた。

 逆に地方の私大でも、工夫と努力で全国から受験生を集めている大学もある。石川県野々市町の金沢工業大学だ。「教育付加価値日本一を目指す」を合言葉に実技教育を徹底。職業観を養う「キャリア教育」を、入学早々の一年生から必須科目にするなど、他大学にない特色を打ち出している。

 その結果、就職は好調で、今春の卒業生の内定率は99・6%。「学歴より学習歴」と大学側は説く。

 大学全入時代の延長線上には、受験生が大学を淘汰する時代が待っている。そして、その先には大学の倒産時代が確実に待っている。

 この逆境を乗り切るには、学生の視点に立った改革の断行しかない。
 日経に比べると、なんともタンパクだ。


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