2004年7月23日金曜日

デフレ克服

■デフレ克服の意味(朝日新聞/経済気象台)
 ところで、少し前までは日本はデフレ・スパイラルの淵にあるという議論が盛んであったが、日本を含め、これらの国でデフレ・スパイラルが生じることはなかったが、その理由は十分には解明されていない。この点を日本経済に則して考えると、幾つかの仮説を指摘できる。
 第1は名目賃金の決定が伸縮的であったことである。教科書は名目賃金が下方硬直的な世界を想定しているが、この前提が崩れると、物価下落→実質賃金の上昇→失業の増加というメカニズムは生じない。
 第2は、国民はエコノミストほどには悲観的でなく、現在の物価下落が何年も続くとは予想しなかったことである。その場合には、名目金利から予想インフレ率を差し引いた実質金利は上昇せず、それ故にデフレ・スパイラルも生じない。
 第3は、金融システムの安定性が維持されたことである。1930年代の米国や昭和初期の日本では大規模な信用恐慌が発生し、これが経済活動の収縮をもたらした。今回は手厚いセーフティーネットや日銀の巨額の流動性供給によって、信用恐慌の発生は防がれた。
 日本経済の成長率が先進国の中で最も高く、企業の収益率もバブル期以来の高水準を記録している現在、「デフレ克服こそが日本経済の最大の課題である」という常套句の意味を冷静に考えて見る必要がありそうである。(薫風)



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