2004年7月25日日曜日

踏み絵芝居

毎日新聞社説「内閣改造 踏み絵芝居で浮揚はしない」
 そんな中、小泉首相が「郵政民営化法案に協力するかを見極めて人事に生かす」と郵政民営化を人事の踏み絵にする考えを示し、党内で物議を醸している。しかし、議員が騒いでいる割には、多くの国民は「これは、またまた芝居ではないか」と冷ややかに見ているのではないだろうか。

 首相の意図は明白だ。参院選敗北後、内閣支持率はさらに低下している。このため、かつて小泉人気上昇に一役買った「首相対改革抵抗勢力」の対決図式を再現し、支持率アップにつなげたいのだろう。閣僚ポストというニンジンをぶら下げることで党内の求心力を高める狙いもあるはずだ。

 今度、内閣を改造すれば小泉政権発足以来3度目だ。首相が当初掲げた「一内閣一閣僚」公約は、既に過去のものとなり、首相としては持論である郵政民営化の推進を内閣改造の理由づけとしたい思いもあるとみられる。

 だが、道路公団民営化など族議員との対決は過去、ほとんど大幅な妥協に終わっている。代用品というわけか、首相は最近、民主党を「抵抗勢力そのもの」と敵対視する一方、自民党は「責任をわきまえている」と評価している。「自民党をぶっ壊す」と既成秩序に立ち向かうように見えた迫力はない。中身なしの手法だけでは、信頼の回復などできはしない。

 忘れてならないのは、踏み絵に何が書いてあるのか、まだ分からないことだ。つまり、民営化とは何か、具体像が今もなお明らかになっていないのである。

 自民党幹部の一人は「改革の内容を見てみないと賛成かどうか聞かれても困る」と語った。これは一理あると言うべきだ。

 民営化の本質は、郵貯、簡保という国営銀行、生保が国内の資金循環をゆがめる一方、その資金が公的分野に大量に流れ込んでいる今の仕組みを、財政投融資と一体で変革する点にある。政府は、郵貯と簡保についてはユニバーサル(全国一律)サービスを義務付けない方針とされるが、それがゆがみの解消にどこまで結びつくかは不明だ。

 結果的には、族議員もたやすく踏める踏み絵になる可能性さえあるのだ。

 きちんと説明せずに、白か黒かの結論だけをつけようとする小泉首相の強引な手法は、年金や自衛隊のイラク多国籍軍参加問題に通じるものでもある。

 国民の大半が「無駄遣い」と感じた道路公団改革と比べ、郵政民営化に対する国民の期待、要請は今一つというのが実情だろう。首相は「なぜ民営化か」「どんな民営化か」をまず丁寧に国民に説明する必要がある。大切なのは改革の中身だ。それがないと、独り芝居に終わることになる。




0 件のコメント: