英紙
フィナンシャル・タイムズ
ユーロ圏経済の行方は
ユーロ圏経済は長い間「半分、空っぽのコップ」であった。現在は「半分、満たされたコップ」になったと言えるだろうか。最大規模でありながら最も停滞していたドイツ経済については、強気の報告が相次いでいる。ドイツ連銀は今年の成長率が1・5−2%となるのは確実だと発表し、ZEW経済研究所も投資家の信頼感がわずかに回復したと指摘した。
長期的に意味するところが大きいのは、ドイツとフランスが週三十五時間制の「足かせ」から離脱しようとしていることだ。ドイツの自動車部品メーカー、ボッシュのフランス工場の労働者は、賃金据え置きのまま長時間労働することに合意した。ドイツでは既に電機大手のシーメンス労組も同様の決議をしており、他の大企業も追従するとみられる。ドイツ経済の短期的見通しも輸出、特にアジアへの輸出好調で好転しており、輸出業界は前年比11%の伸びを見込んでいる。
ドイツ、フランスでの労働時間延長の動きは、欧州にとっては驚くべき構造的変化であり、大陸欧州の経済が言われるほどには動脈硬化を起こしていないことを示す。
しかし、ユーロ圏経済全体の先行きは、それほど勇気づけられるものではない。特にドイツでは個人消費は低迷を続けており、今後、失業も増加する傾向だ。ユーロ圏各国の政府は金融政策、財政政策の自由度を奪われており、行動の余地は小さい。ユーロ圏経済の回復はもろいものであり、主要輸出相手国の景気に左右される。このため、米国の投資銀行、リーマン・ブラザーズは二〇〇五年の成長予測を下方修正した。コップは「もう半分」になったかもしれないが、慎重に見極める方がよかろう。
��7月21日)
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