2004年7月16日金曜日

ブッシュ党

■米から見た参院選=河野俊史(北米総局),毎日新聞/記者の目
 つまり、いま問われているのは、単独行動主義に走って「大義」のない戦争を遂行したブッシュ政権と、それを支持してきた有志連合の同盟国の双方の責任なのだ。11月の米大統領選に限らず、3月のスペイン総選挙も今回の日本の参院選も世界の主立った選挙は、すべて共通の「争点」を内包している。各国が同じテーマでそれぞれの民意を問う前代未聞の政治状況である。地球規模で考えれば、各地の選挙は国際社会が「ブッシュ党」を信任するかどうかを審判する場だと言えなくもない。
 対イラク開戦前から「ブッシュ党」を支え続けたスペインのアスナール政権の退陣には、直前の列車爆破テロ事件が瞬間風速的に影響した面が少なくない。しかし、「ブッシュ党」の大番頭ともいえる小泉首相の今回の凋落(ちょうらく)には、有権者の根源的な失望感が反映しているように見える。もちろん、争点はイラク問題ばかりではない。だが、イラク戦争を「戦う価値のない戦争だった」と考える人が53%と過去最高に達した米国の状況(13日発表のワシントン・ポスト紙の世論調査)と切り離して論じることは不可能だろう。
 イラク戦争をめぐる国際社会と米国民の“温度”はこのところ目立って近付いてきた感がある。イラク戦争を「誤った情報に基づいて開戦が決められた戦争」と断定した上院情報特別委員会の報告書(9日公表)などが影響していることは疑いない。そんな時期だけに、同盟国での「ブッシュ党」への逆風は大統領選挙にも直接、間接の波及効果をもたらすだろう。
 政権奪還を目指す民主党が「世界から尊敬される米国」をキャッチフレーズに掲げて国際社会の視点を重視するのも、そんな背景があるからだ。
 気になるのが、小泉−ブッシュの関係だ。お互いの支持率低下の背後で、共通点が目に付く。「謙虚さ」を欠いた政治姿勢が重なるような気がしてならない。ワシントンから見ていて特に驚くのは、日本国内に先駆けて自衛隊の多国籍軍参加をブッシュ大統領に表明した小泉首相の神経だ。「小泉−ブッシュ関係」のおごりが根底にあるのだろうが、自国の民主主義の手続きも無視した追従的な対米協調路線は、米側に足元を見られるだけだ。それが首相への批判を招き「ブッシュ党」のブレーキになったとすれば皮肉な話である。
 「華氏911」の劇場の拍手を引き合いに出すまでもなく、米国社会はブッシュ政権の評価をめぐって深く割れている。ブッシュ大統領は12日、「テロとの戦争」を自賛し、イラク戦争を改めて正当化する演説を行った。大量破壊兵器問題という「大義」を欠いてもイラク侵攻は正しい判断だったと主張し、大統領選を強行突破する方針を宣言したと受け止められている。「世界はより安全になった」という言葉を、小泉首相はどう聞くのだろうか。



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