2004年5月9日日曜日

福田康夫官房長官

■福田康夫の辞任には驚いた。未納問題よりも、年金法案を通すためにとった行動の代償ということだろうか。政治不信に拍車をかけたっていうけど…こんなくだらないことで官房長官が辞任するなんてバカげている。
■私は天邪鬼(あまのじゃく)なので、弁護したくなる。自分たちは納めているのに政治家が納めていないなんて…そういう不満はもっともだ。だが、未納といっても、いずれも行政上の「うっかりミス」であって、意図的な不払いとは峻別されるべきだ。このようなわかりにくい制度を変えなかった政治家の責任だ…もっともだ。だが、財政赤字と同様、これまで注視しなかった国民の責任もあるはずだ。
■小泉首相とはすでに辞任を打ち合わせていたのだろう。年金改正法案の修正話がまとまって、週明けの衆院通過が確実になってからの引責辞任。タイミングを考慮して今にした。福田が「私自身の未払い発表までの対応の仕方について不手際があり、政治不信を増幅させたことをおわびする」と言ったり、小泉首相が職務をまっとうするように指示するなど、未納仲間の他の六閣僚がドミノ倒し辞職にならないようにも配慮している。その結果、菅直人の辞任へと焦点が集まった。与党としては「してやったり」といったところか。
■後任の官房長官は細田博之だ。これは「サプライズ人事」が飛び出すかな…と思っていたが、それはなかった。「参院選後の内閣改造までの暫定長官」という見方もあるようだ。
■福田康夫について、朝日新聞はいかにも「朝日」な論を展開した。
(前略)
 一方で、「影の外相」と呼ばれたり「独裁者」と批判されたりもする政権の要だった。タカ派への抑え役でもあっただけに、一閣僚の辞任では済まない重い意味を持っている。
 イラク問題では、日米関係を重視する首相や与党に表立って反対はしなかった。しかし、自衛隊の派遣には慎重な姿勢をにじませることもあった。米軍を支援するために自衛隊の活動範囲や内容を広げることにも批判的だった。
 ふんばりを見せたこともある。昨年末の予算編成で、石破防衛庁長官がミサイル防衛システム導入のため防衛庁の予算の増額を求めたときだ。福田氏が石破長官を厳しく批判し、逆に戦車や護衛艦などの正面装備を削減する結果になった。
 日米同盟強化のため集団的自衛権の行使を可能にすべきだとか、憲法を改正して自衛隊を軍隊と位置づけるべきだなどという声が自民党内で強まっている。
 それらに対して福田氏は、海外での自衛隊の活動はあくまでも非軍事的であり、抑制的であるべきだという考えを貫こうとしていた。年末に予定されている「防衛計画の大綱」の改定を自らが中心になってまとめようとしていたのも、その表れだ。防衛族議員にとっては、さぞ疎ましい存在だったろう。
 また、北朝鮮問題では、「対話」を基調に外務省の田中外務審議官と二人三脚で取り組み、「もっと圧力をかけるべきだ」という自民党の安倍幹事長らとしばしば対立していたことは知られている。
 首相の靖国神社参拝のあと首脳外交が途絶えた中国へ、自ら出かけて行った。異例のことである。国立の追悼施設建設に意欲を見せていたのも福田氏だが、実現の見通しは立っていない。
 森前首相の時代から3年半にわたって政権の中枢にいたものの、与党への根回しが苦手ということもあって、かなわなかったことが多かったのではないか。
 自民党内では、タカ派議員が幅を利かせている。与党の一翼を担う公明党は政権維持のために厳しい姿勢をとっていない。福田氏は、そんな与党と首相の間で板挟みになることも多かった。
 今後、首相は与党と対決するにせよ、妥協するにせよ、自分が矢面に立たなければならない。福田氏は、政権の行き過ぎにしばしばブレーキをかけてきた。これから、その役を担う人がいるのか。政権の行方が不安でならない。
 福田康夫が過度に右へ行くことへのブレーキだったと強調し、彼がいなくなったらタカ派へと傾斜していくのではないかと危惧している。あぁ、そういう見方もできますか。そう言われると、惜しい人をなくしたなぁ…って、死んじゃいないけど。
■菅直人がテレビに積極に出演している。だが、裏目に出るばかりのように思える。自己保身に走ってるようにしか映らないからだ。「一回辞任して出直すべきだ」「他の未納閣僚の責任を問うていくのか?」と自分の都合の悪い話になると、三党合意の弁明へとシフトしてごまかしている。
■テレビに出れば出るほど、注目が集まって、この問題が蒸し返される。これが民主党の辞任論を後押しする結果となるのではないか。福田康夫が辞任によって、もはや辞任しか選択肢が残されていない気もする。これ以上、党首を続けても党内で孤立して、本当に政治生命をうしないかねない。


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