唐突とも思える「2リーグ存続」への揺り戻し。だが、旗振り役となった阪神の野崎勝義球団社長は以前から「プロ野球繁栄のためには12球団の共存共栄が必要」という持論を持っていた。
13日に開かれた阪神球団の定例役員会で、野崎社長と星野仙一オーナー付シニア・ディレクター(SD)は猛烈に「1リーグ反対」を訴えたようで、久万俊二郎オーナーは「野崎君は人が変わったようだった。久しぶりに若い者にやられた」と語り、2リーグ維持への方向転換を示した。
「13日に球団としてのコンセンサスを得た」という野崎社長は翌日に、私見として(1)交流試合の実施(2)完全ウエーバー制に近いドラフト制度の導入(3)フリーエージェント権取得期間の短縮−−などの具体案を発表。“言い出しっぺ”を待っていたかのように、15日になってセの4球団が賛意を示した。
一連の動きを見ると、共存共栄の理想論の陰にセ5球団の「そろばん勘定」も見え隠れする。1リーグになれば1試合1億円と言われる巨人戦の放映権料減収は必至。特に観客数減少に悩む広島などは死活問題に近い。
引き金は、7日のオーナー会議で西武の堤義明オーナーが明かした「もう一組の合併話」ではなかったか。予想以上に急激に加速した1リーグへの動きに、球団によっては既得権益への企業防衛を図った可能性も捨て切れない。
野崎社長は当面、交流試合を軸に5球団で案をまとめる予定。だが、これだけでは1リーグ移行を要望するパの球団を翻意させる材料としては弱い。「球界の盟主」を自負する巨人と徹底抗戦を図るか、どこかで折り合いをつけるかも見えにくい。しかしながら、5球団が世論の支持を受けてリーダーシップを発揮すれば、プロ野球の魅力ある発展への道筋ともなり得る。
■巨人戦が減るうえに、パ・リーグの不人気球団との対戦が増える…球団経営にダメージを与えるのは確実だ。世論にのっかかって、既得権益を守ろうとするのは、当然の行動といえる。
■「結局、巨人依存体質か…」と嘆いてしまうが、その一方で、経営者の側から具体的な提案がでてきたのは歓迎すべきことだ。交流試合などパリーグ側への歩み寄りも見られる。大いに検討すべきだろう。
■ナベツネ(渡辺恒雄/巨人オーナー)の暴走のせいで、「1リーグ制」自体が悪者になっている。連日の報道ではあたかも「ファン」が「1リーグ制」に反対しているような印象をうけるが、これが正しいとは思わない。
■冷静になればわかることだが、「1リーグ制」に関して、「ファン」が完全に「NO」と言っているわけではない。選手・ファンを無視した一部オーナーのやり方が気に入らないのである(怒りで我を忘れてしまったせいか、それを混同しているファンも多いようだ)。
■2リーグ制の範囲内でどれだけの改革ができるのか?あるいは、ドラスティックに1リーグ制に移行すべきなのか? 大いに議論の余地はある。なぜその努力を怠るのか。現在、プロ野球が危機にあることは確かだが、ことを急ぐ必要はない。
■選手会はストライキをすべきかどうかで意見が分かれている。「ファン離れをまねく」というのが主たる反論だ。根拠として、メジャーリーグの例を挙げているが、状況がまるで違っており、ナンセンスと言わざるをえない。
■そもそも、この場合の「ファン」というのがクセモノだ。多くのファンは選手会については支持しているはずだ。であるならば、なぜストがいけないというのか。密室談合で物事を決めているオーナーに対し、「NO!」と言っている彼らを、いったいどのような「ファン」が見捨てるというのか。結局、「ファン離れ」は反対のための反対でしかない。「ファン」とは、いったい誰なのか?そもそも、その「ファン」は実在するのか?
■選手会とて、自己保身にはしっているわけではない。高額年俸についても譲歩すると言っている。議論をしましょうというのは当然のことではないか?
■一部には、「選手は雇われの身なんだから…」とナベツネ式の「たかが選手」論を展開する者がいる。先人たちが勝ち取ってきた労働者の権利を放棄せよと言うつもりらしい。それとも、彼/彼女らはチャップリンの「モダン・タイムス」からタイムスリップしてきたのだろうか?
■それにしても、諸悪の根源はナベツネだ。議論をせずに独善主義におちいる…彼が「ジャーナリズムの長」というのは、この国の悲しい現実だ。まぁ、それも御用新聞・読売の長であるとすれば、妙に納得する部分もあるのだが。
■元共産党員のナベツネは、いまだに「共産党」的思考から抜け出せないらしい。共産党には議論の余地などないし、「議論をしましょう」と言ってきた党員に対して、委員長が「たかが党員が!」と言ってもなんら不思議じゃない。
■セ・リーグ5球団の反乱に、ナベツネは「こっちにも考えがある」と発言しており、金正日ばりの独裁者っぷりを発揮して、ファンの怒りに油を注ぎそうだ。読売不買運動でもしないと、彼は聞く耳を持たないのだろうか。
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