時代が人を選ぶとすれば、やはりとんでもない時代になったということなのだろう。「小泉純一郎」という、およそ首相にふさわしくない人物が長期政権を保ち、しかも高い支持率を維持しているのだから。
かれこれ十数年前、小泉氏とコーヒーを飲んだことがある。雑談の内容は忘れてしまったが、結構、好印象を抱いた。何より、経世会的政治家の漂わす生臭さがないのが好ましかった。同席した政治部記者に後日、その話をすると、「だから、力を持てないんだよ」と言い放った。むろん、彼が首相になるなど、二人とも夢想だにしなかった。
見通しの甘さと、人を見る目のなさに赤面する。しかも、力のない政治家が、永田町のトップに登り詰める、そんな時代の到来を予測できなかったことが口惜しい。
小泉人気は「建前をぶち壊すホンネ」にある。密室性の政治と建前の行政にとことん不満がたまったところへ、バブルの崩壊。そんな閉塞状況のもとでは、「ホンネ」が人気を博すのは当然の流れだ。そこまでは誰でも読める。
だが政権が続くにつれ、小泉流ホンネの内実は、単なる開き直りと、官僚への丸投げであることがはっきりしてきた。庶民受けする「歯切れのよい」言葉が、実はあまりに軽く人をばかにしていることは、「人生いろいろ」発言で明白になった。「痛みを伴う構造改革」の背後に、福祉切り捨てなどなんのその、「何がなんでも財政赤字解消を」と意気込む財務省の思惑が潜んでいたこともしだいに明らかになりつつある。
こうなれば、人気の反動で小泉株は一気に下落??のはずだった。だが、依然として大衆は小泉支持に回っている。
ここまであからさまな開き直りを、しかしそれでも大衆は受け入れる時代になると予測。そのうえで、小泉氏をかついだ官僚や政治家がいたとしたら、その悪辣なる知恵に脱帽するしかない。
といって、こちらも引き下がるわけにはいかない。
2004年6月18日金曜日
小泉純一郎研究
北村肇(週刊金曜日,一筆不乱)
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