2004年5月3日月曜日

憲法九条

毎日新聞 2004年5月3日 東京朝刊「論点:憲法改正の是非、こう考える」より
◆EU憲法草案が模範(民主党 仙谷由人)
 従来型の改憲論というのは、国家対国家の戦争を前提としている。しかし、今は地域紛争が中心となり、戦争の質が変わってきている。そこにブッシュ米政権の先制攻撃論、単独行動主義の米国を中心とする有志連合が登場する背景がある。だが、国際紛争については、あくまでも国連を中心とする多国間の枠組みで対応すべきではないか。ここに今日の憲法論議の基本がある。
 従来の戦争のイメージのまま憲法9条を改正して再軍備する発想は既に古くなっている。一方、「非武装中立・自衛隊解体」を唱えるだけでは新しい時代に意味を持たない。何よりも問題なのは解釈改憲だ。90年の湾岸危機を契機に、自衛隊の海外派遣を可能とするPKO(国連平和維持活動)法が成立したが、やはり憲法を変えてからやるべきだった。94年の村山内閣当時、旧社会党は「専守防衛の自衛隊」を容認し、9条解釈を変更した。この時も憲法を変えることを自ら提案するのが筋ではなかったか。さもなければ「法の支配」は守れない。
 9条についての考えはこうだ。自衛隊の存在が合憲の対象ならば、それを書きこまない憲法というのはあり得ない。なぜならば、憲法は文民統制の最たるもので、権力構造に向けられた規範であるからだ。そうでなければ、憲法を持つ意味はない。まず国権の発動として自衛隊の海外派遣をしてはいけないことが大原則だ。次に国家を超えた国際機関に主権の一部を移譲し、そこに派遣部隊を提供できる規定を盛り込むことが必要である。国連憲章でも憲法でも集団安全保障に参画することは許されている。
 模範とすべきは「欧州憲法条約草案」である。5月1日に25カ国に拡大したEU(欧州連合)は、戦争のない欧州を前提にしている。そしてNATO(北大西洋条約機構)軍に代わる平和構築を試みようとしている。同草案の前文には「平和と正義と連帯を全世界に拡大する努力をたやさぬ意欲を持つと信じ」とうたっている。「国連憲章の原則に従った平和維持活動、紛争防止活動および安全保障強化のため(EU)域外での使命」において、任務の遂行は「構成国の提供する諸力を利用して行われるものとする」と規定する。同草案は私の考える9条改正案と極めて近い。
 6カ国協議の過程を見ると、東アジアでも地域間協力の体制が可能性として生まれつつある。条件さえつけば、日本は「アジア連合」的な地域安全保障の枠組みを構築できるのではないか。現時点では国連の承認があり、国連の旗の下に行動するのであれば、もし仮に北朝鮮やその他のアジアの地域で何かがあった場合、部隊を提供する選択肢があってもいい。
 ただ、9条だけを変えれば改憲というのは旧来型の発想である。民主党が重視するのは統治機構の再構築だ。地方分権を本当にやるには自治体の課税自主権を憲法に明記しなければならない。

◆9条守るのが「国益」(福島瑞穂)
・9条のおかげで、軍隊が戦後海外に出ず、だれも殺さなかったことは日本の大きな財産だ。
・9条がなくなれば集団的自衛権が認められてしまう。そうなれば、日本と同盟関係にある米国がかかわる戦争に、何の歯止めもなく参戦していく恐れがある。
・9条を守れば軍事的に中立の立場を貫くことにつながり、国際的な信頼をかち取れることも大きい。
 福島のは要点のみ、保岡興治は完全省略。


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