2004年5月4日火曜日

社説比較/憲法記念日

■今日は憲法記念日。ゴールデンウィークなので、東京は静か…と思いきや、右翼の方々がうるさい。市民の生活を尊重しないバカが憲法を語るな。

■世論調査では「憲法を改正すべきだ」と改憲派が大勢をしめているし、自民、民主、公明の主要政党は具体的な憲法改正案作りに動き出し、政治日程にものぼっている。憲法改正は目前だ。

■まぁ、新聞各社の主張は読まなくてもわかりそうだが、タイトルを見れば…「『新憲法』を政治日程に乗せよ」(読売新聞)「憲法記念日 緊急性ます9条見直し 教育基本法の改正と両輪で」(産経新聞)「憲法改正の機は熟しつつある」(日本経済新聞)…明確に改憲の立場をとり、「憲法記念日を思う――多彩な民意を直視して」(朝日新聞)「憲法記念日 まず改正の目的を語ろう−−21世紀、どんな国になりたいか」(毎日新聞)…どちらとも言っていない。

■改憲論議で思うのが、これだけ憲法をないがしろにしてきた国で、改正した憲法が守られる保証があるのかね…ってこと。自分たちが軽視してきたことを棚上げして、「憲法と現実が乖離している」の一点ばり…そんな連中の改憲案にはとても賛同できない。改憲論議の前に厳格な違憲審査制を保証してくれ。

■読売・産経っぽいなぁってとこを引用しておく。
「イラク派遣自衛隊がテロリストに攻撃されても、武器の使用が正当防衛・緊急避難に限られるのはその一例だ。憲法九条により海外での武力行使は禁じるとの解釈があるためでもある。だが、こうした制約がある限り、国際社会の平和と安全の確保のために求められる安全保障上の役割を日本はなにも果たせない。自衛隊は外国の軍隊に警護され続けるしかない。」(産経新聞)「集団的自衛権を行使できないとする政府の憲法解釈は、安全保障政策や自衛隊を活用した国際平和協力活動を制約してきた。国際情勢や日本の安全保障環境が大きく変化している時、これでは、日本の国益を守ることはできない。」(読売新聞)
 産経には「だったらイラクに行くなよ」と言いたいし、読売には「集団的自衛権」があることで、どういった選択肢が追加され、それが国益に寄与するのかと問うてみたい。

 さらに、産経がクレイジーなことを言い出した…
 その中で自民党憲法調査会の憲法改正プロジェクトチームは、新たな憲法前文に「健全な愛国心」「日本の文化・伝統・国柄」を盛り込むことに加え、国際協力への積極参加、自衛隊の存在明記を打ち出すなど、改憲のたたき台を示しつつある。 教育基本法も国の根本法規であり、新しい国造りには改正が不可欠だ。憲法と車の両輪で「愛国心」を軸に見直し作業を急がなくてはならない。
・・・いやはや、何と言ってよいのやら。「健全な愛国心」「日本の文化・伝統・国柄」…って何ですか?憲法9条以上に解釈の余地がいっぱいあって、都合のいい言葉だね。

■一方、朝日・毎日は、「だからこそ、大いに議論してほしい。各党が国や社会のありようを根本から考えるのはよいことだ。国民にとっては政党をよく見定めるチャンスでもある。」(朝日新聞)「われわれは21世紀どういう国になるのか、そこからつめなければいけない。」(毎日新聞)と結んでおり、立場がわかりにくい。

■朝日新聞
 成長した自衛隊はいまや世界で屈指の戦力であり、立派な軍隊ではないか、憲法はごまかしが過ぎる。そんな声も強まってきた。「9・11」のあとは、インド洋上へ、イラクへと、大きな議論の末、PKOの枠を超えた自衛隊の海外派遣も続いた。
 それが改憲論にもつながるのだが、目を引くのはここでも「護憲的改憲論」の台頭だ。憲法に自衛隊の存在を明記しつつ、役割に歯止めをはっきりかけよう、といった発想である。それも一つの考え方に違いない。国連軍的な部隊への参加を明記する考え方もある。増えた9条改正論も、中身は幅が広がった。護憲と改憲はまだら模様になっている。
 しかし、それでも9条の改正となると「反対」の人がまだまだ多数派だ。少々の矛盾はあろうとも、「過去の戦争に深い反省を示した証しだから」「変えたらますます軍拡に向かう」「アジアの国々に警戒心を与えたくない」。国民に根強いそんな考えは大事にしたい。
 戦火のやまぬイラクに自衛隊が派遣されて3カ月。心配された事態は幸い起きてないが、代わりに用心深く宿営地に引きこもりがちで、看板の「人道支援」も思うに任せない。皮肉なことだが、そんな姿勢によって、「勇猛」だった旧日本軍との違いを世界にアピールしているのなら、それは9条の精神にかなうのかもしれない。
 だが、武装勢力が「撤退」を求めて日本人を人質にしたように、「米国支援」という自衛隊派遣の本音は隠しようもない。この先、もし襲われ、撃ち合いになったりしたらどうなるか。憲法との関係はなお危うい縁にある。
そんななか、9条改正によって堂々と軍隊の存在を認め、れっきとした米国の同盟軍にしようという考えが自民党などに根強い。これが改憲論の核ともいえるのだが、国民多数の気持ちを読み違えていないか。
「国民に根強いそんな考えは大事にしたい」って苦しい立場は理解するけど、やや弱い気がする…。

■毎日新聞には最も賛同する部分が大きかったので、長々と引用しておく。
◇国連決議に依拠できるか ではどのように改正するのか。まだ具体的な多数案があるわけではない。方向として国連の了解の下で日本も治安維持・平和活動のような部隊に自衛隊ないし特別編成部隊を送れるようにしようという案が有力だ。前文の改正も同じ文脈にある。決して侵略戦争の意図はない大前提だ。 だがその大前提が一番疑わしいとするのが9条改正への有力な反対意見だ。現に解放軍のはずの米軍が侵略者として攻撃を受けている。世界が非常にきな臭くなってきた今こそ、日本が誇る平和憲法の精神をもっと発揮すべきではないか。武力を使わないで世界の問題を解決するとうたった日本国憲法の神髄を生かす国際政治をするのが筋ではないかというものだ。 イラク戦争の例をとっても、もし現状に合わせた憲法改正ができていたとしたら、日本は初めから米英軍といっしょにイラク攻撃に加わった可能性は大きい。そこから先は今とはずいぶんと異なる状況になっていただろう。 だがよく考えると、国連の決議の下にしかできないと憲法で明文規定があるとかえって復興支援さえできないかもしれない。特に、国連決議という行動の条件はこの先ますます難しくなる可能性もある。しかも、決議自体どこまで何を決めたのかで解釈に差が出る。憲法の明文規定があるゆえに、ますます物議をかもし出す可能性も大きい。 総論や概念的な改正論ではなくいざ具体的な改正文案になると、判断はますます難しいのである。そこに至って初めて憲法を論じる論憲が真剣味を帯びてくる。◇米国の存在が前提 その際よく考えなければいけないことがある。米国の存在だ。現行憲法の平和条項は日米安保条約とセットになって現実を歩んできた。この間米国は朝鮮戦争に始まり、ベトナム戦争、湾岸戦争、ユーゴ空爆、アフガン空爆・イラク戦争などほぼ恒常的に世界の戦争にかかわってきた。日本の憲法解釈の綱渡りやそれが限界にきて改正の必要性が高まってきたのもその流れに呼応する。 それは今後も続くと予想できる。したがって憲法改正、特に9条関連を考える際、現実にある米国をどう見るかが大きなポイントになる。これだけ戦争にかかわりつづけてきた国が今後は戦争に対して消極的になるのか。米国次第で改正した日本国憲法の活用具合はまったく違ってくるからだ。 その現実を抜きに机上の空論としてあるいは条文のあり方として改憲を論ずることは非常に危険でもある。現行憲法で日本は矛盾を抱えながら、その矛盾を実行部隊、いい例が今回の派遣された自衛隊の不安定な存在、にしわ寄せしながらもとにかく自衛隊を海外に派遣するところまできたのである。憲法改正してこれ以上具体的に何をしようというのだろうか。 米国が次に起こすであろう戦争ではついに初めから参加したいのだろうか。そうではなく日本独自に世界平和維持のために自衛隊の持つ武力を活用する決意をするのだろうか。9条改正は世界との付き合いのために人並みのことができるようにする現状追随がテーマではない。たとえばアジアの集団安全保障機構構築に積極的に打って出るなど、外交を通してどこまで積極的に世界とかかわっていくつもりなのかをはっきりと示す、日本の国のあり方が問われるのである。
 まさに憲法9条の核心部分だ。国の礎である憲法を決定するのに「アメリカ」が出てくるのはマズイのか、保守派は「アメリカ」について何も語っていない。それとも「対米追従」との批判を恐れたのか。まさか…憲法を「押しつけられた」と怒っている保守派が、「民主主義」を押しつけるアメリカを支持することへの後ろめたさ…ではなかろうな?■憲法に世論調査でいつも気になるのは、「改憲すべき」と答える人がどのような憲法を想定しているかだ。私には「どちらとも言えない」としか答えようがない。理想では「改憲すべき」と思うのだが、現在の政治状況や社会、国際情勢などが、それを躊躇させる。その際、念頭にあるのは、やはり憲法9条だ。

■日本が憲法9条を改正して「軍隊」を持つ時、米国追従ではない意思決定はできるのか、これにつきる。「憲法9条」という「歯止め」がなかったら、日本は「No」と言えず、どこまでもアメリカに付き合うことになるのではないか。「北朝鮮のことがあるから、しょうがない…」「人道復興支援」と思考停止のまま、「テロとの戦い」に向かっていく危険性がある。そこまで突き詰めた議論をせずに、9条という「歯止め」だけを外すのは危険だ。

■9条を改正して自衛隊を「軍隊」にしたい、海外での軍事行動を容易にしたいという、「足かせ」を外す議論ばかり保守派はしている。だが、日本が「軍隊」を持ったとき、イラク戦争時のドイツ・フランスのように、アメリカと距離を取れるのか、はなはだ疑問だ。思考停止のままそれを支持することしかできないのではないか。不幸なことに、日本は主体的に戦略を立てる能力もないと思う。米国に無限に追従して、どんな危ないことでもやると考えているのか。

■「北朝鮮」が「脅威」だって?改憲したい保守派の洗脳は見事に成功しているようだ。だが、あの貧弱国家にそんなにビビる必要があるのか?あの国にいったい何ができるの?結局、「脅威」は誇大されているわけだが、まぁ、そんなことはどうでもいい。では、憲法9条を改正すれば、その「脅威」とやらは除去できるっていうのか?「北朝鮮」という「脅威」に、いったいどれだけ軍備増強したら安心できるのかな?

■で、その場合、チキン野郎な将軍様はビビっちゃって、いよいよ軍備増強を強めるわけだ。一方、金正日のおかげでアイデンティティを確立している保守派たちは、「脅威は強まった」ってエクスタシーに達するんだろうな。申し訳ないが、そんなマッチポンプにお付き合いするほどの旺盛なボランティア精神を持ち合わせていない。

■読売・産経に比べたら、イデオロギー色が薄いから日経は好感が持てる。関心を持った部分を…
 二院制のあり方も根本から問い直す必要がある。日本の参院は世界各国の上院と比べて強い権限を持っている。このため、議院内閣制の円滑な運用に支障が出るケースがしばしば見られた。日本の内閣が短命でリーダーシップが弱い理由の一つに強すぎる参院の存在がある。 国民の間にも根強い「参院不要論」がある。小泉純一郎首相も菅直人民主党代表も「一院制は検討に値する」と述べている。大いに議論したらいい。二院制を維持する場合でも参院の権限と規模は縮小すべきだ。参院で否決された法案を衆院で再議決するには3分の2の賛成が必要だが、これを過半数に改めることが望ましい。国会の会期制を廃止して通年国会にすることも大事である。
 見落とされがちだが、大きな論点の一つではある。ただ、内容はちょっとね。「日本の内閣が短命でリーダーシップが弱い理由の一つに強すぎる参院の存在がある」って、本当かい?いつの時代のことを言っているの?本来、議員内閣制では政権が議会の多数派の支持を得ている。リーダーシップは発揮できる土台はあって、むしろ、警戒すべきほどだ。最近の年金改革を見よ。これ以上「円滑な運用」とやらがなされてしまったら、それこそ与党のやりたい放題だよ?


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