2004年5月11日火曜日

新聞社説/菅直人代表辞任

■まぁ、毎度のことながら…他人のふんどしで相撲をとるわけだが、新聞各紙の社説に言及しつつ展開したい。
■「未納兄弟・菅直人」の辞任については、
「最初に三閣僚の国民年金保険料未納が明らかになった際、『未納三兄弟』などと個人攻撃に走った。本来、この未納問題を年金制度の欠陥をただす契機にすべきだったのに、政争に持ち込もうとしたのが誤りだった。」(読売社説)
…ということにつきるし、
「なぜ『未納3兄弟』と閣僚批判する前に、自身の加入状況をチェックしなかったのか。先手を打って辞任し、政府・与党の追及に転じようとしなかったのか。さらなる混乱を招く3党合意を急いだのか。」(毎日社説)
…というのが素朴な疑問だ。
■辞任の経緯を説明するのはどの新聞も共通している。読売・産経の社説は似通った論を展開している。三党合意承認を歓迎しているのが特徴だ。
■産経新聞
 寄り合い所帯といわれる同党の路線の明確化と「責任野党」を期待されたが、理念・政策面での現実路線の鮮明化は中途半端でしかなかった。
 昨秋の総選挙で議席を増やしたほか、有事法制に賛成するなど、政権を担える野党第一党の存在感を示した功績はある。一方ではイラクでの邦人人質事件で当初、小泉政権に全面協力する姿勢を取っていたが、途中から「政権の責任は大きい」と批判に転ずるなど、ぶれが目立つ党運営であり、抵抗政党の域を出なかったのは残念だ。
 こうしたことが国民の支持の広がりにつながらなかったのではないか。四月の三つの衆院補選で敗北し、求心力を失ったことに加え、年金問題でも与党との間でわかりにくい行動をとったことが辞任につながった。
 菅氏は先週末、テレビ番組に出演し、「年金制度が政府案のままで進んでしまったのでは国民に責任を果たせない」と、年金制度改革に関する三党合意への理解を求めるなど、説明責任を果たそうとする意地をみせた。
 三党合意は最終的には了承された。参院選の争点に年金問題を据え、政府案の問題点を追及しようというグループの主張より、年金一元化を含む社会保障制度全般を見直すという訴えが受け入れられたことを歓迎したい。
 イラク人質事件での政府批判が「国民の支持の広がりにつながらなかった」とするのは、いかにも産経的な珍説である。
 「ぶれが目立つ党運営であり、抵抗政党の域を出なかった」と言っているが、今回の三党合意こそ「ぶれが目立つ党運営」でなかったか。なんか奇妙な論理展開だ。
■読売新聞
 民主党内では、七月の参院選を意識した思惑がいろいろ交錯している。
 菅氏の辞任も、「菅氏では勝てない」という声が広がった結果だ。
 党内では、三党合意に対して、旧自由党議員らから「政府・与党にすり寄り過ぎだ」との批判や異論が噴出した。参院選で攻勢に出るために、三党合意を破棄して、与野党対決ムードを演出すべきだ、との主張が底流にあった。
 国家百年の計である年金問題を、政争の具にすること自体が筋違いだ。いつまでも与野党の不毛な対立を残し、年金改革論議を頓挫させてはならない。
■読売・産経は三党合意を肯定的に捉えてきた。これまでも審議拒否戦術などをする民主党を、「政権担当能力」「責任野党」なる怪しい言葉を使って非難してきた。もしかすると、反対ありきだった旧・社会党の亡霊に苦しめられているのかもしれない。
■朝日新聞
 この与野党合意について、与党からは一元化の約束ではないという声があがり、合意に基づいて修正された政府案にも一元化の方向は明記されなかった。年金を参院選の大争点にするはずが、これでは戦えない。民主党内にそうした焦りの声が噴き出したことも分かる。
��中略)
 民主党内には参院選への不安が募る。だが、ここは目先のことにとどまらず、自民党政権に取って代わるための「野党道」を真剣に考え直すべき時だろう。
 菅氏の失敗は未納問題への対処にとどまらない。自分が先頭に立って振ってきた政権奪取という民主党の旗印を揺るがせたことである。
 年金改革で民主党は抜本改革の対案を出した。今後の方向性を示すものとして評価できる内容だ。菅氏も当初はこれを武器に真っ向から勝負を挑もうとしたが、途中から迷走してしまった。
 民主党にはその使命を思い起こしてもらいたい。それは、政権交代の実現だ。それがなければ本当の構造改革も政治の健全化もできないと考える人は多い。そうした意識と覚悟の乏しさが、この右往左往の根本の原因である。
■民主党に社会党の影を見るのはナンセンスだ。なぜなら、民主党は対案を出している。政府案は徹底的に叩き、自らの案を売り込み政権打倒を試みることこそ「責任野党」だ。与党と真っ向勝負しなければ、野党は埋没してしまう。そうなれば、有権者が民主党の存在意義を見出すのはますます困難になるだろう。
■年金問題を政争の道具にするなという読売の指摘はもっともだ。しかし、政策論争の道具にすることは歓迎すべきだ。参院選の争点にすれば、両党とも切磋琢磨したのではないか。「国家百年の計」であるからこそ、年金改革は国民的議論がなされるべきで、国民を蚊帳の外におくべきではない。
■最近、称賛してばかりいるようだが、毎日新聞が一番よかったと思う。
 合意は「年金の一元化問題を含む社会保障制度全般の見直し」について、「07年3月をめどに結論を得る」などとし、現在審議されている政府案の付則に一文を盛り込むというものだ。だが、今後の与野党協議で、民主党が主張する厚生年金、共済年金、国民年金の一元化が実現する保証はない。一方で政府・与党は、抜本的改革とは程遠い内容の政府案を、今国会で成立させようとしているのだ。
 中身以上に問題なのは、合意に至った経緯だ。菅氏は、年金問題に幕引きをし、自身の責任論も棚上げしようとしたのではなかったか。そのシナリオが、突然の福田氏の辞任で崩れてしまったというのが実相だったと思われる。
 与野党双方が都合よく解釈できる玉虫色合意により、問題を先送りするのは、民主党も批判してきた旧態依然とした国会対策的手法だ。加えて、与野党協議という同じ土俵に上がってしまえば、参院選の争点になりづらくなる。小沢一郎代表代行らが3党合意の破棄を求めたのも一理あろう。
 振り返れば、今回にせよ、イラク問題にせよ、民主党は、当初は政府・与党を激しく批判するものの、いつしか対決姿勢は薄れ、与党との違いが見えにくくなるパターンを繰り返してきた。菅氏の辞任で、ことは済まない。こうした分かりにくさ自体に、国民は厳しい目を向け始めていることを、民主党は忘れてはならない。
 読売・産経とは対照的に、毎日はこれこそが「旧態依然とした国会対策的手法」と非難する。
 また後半部分も産経とは対照的だ。産経らが言う「責任野党」に徹すれば徹するほど、民主党の存在感は薄れる一方なのである。そこらへんに言及せずに、「旧態依然の野党」と非難するのは安易過ぎる。
■日経は特に目を引くところはなかった。まるでニュース解説のようで、民主党内の分裂を確認し、「民主党は一刻も早く混乱を収束させるべきだ」と言っただけ。
■東京新聞/中日新聞
失敗の教訓を生かす場は参院の年金審議だろう。このまま混迷を深めるだけでは政治はまた緊張を失う。失望感が高まれば参院選でも有権者の足が遠のく。結果は、先の衆院三補選を思い起こすまでもなかろう。
 菅直人は民主党の敗北を低投票率のせいにしていたが、自らの未納問題でますます有権者の腰を重くさせた。まさか、それを見越して「義務投票制」を主張したわけではあるまいな。


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