2004年4月15日木曜日

被害者家族を叩く、醜い日本人/イラク人質事件

■昨日の日記で「家族が外務省職員を怒鳴っていた映像は、このような意見を勢いづかせることとなろう」と書いたが、事態はもっと深刻だったようだ。

■心労の家族に心ない中傷 留守電にまで「死ね」(共同通信)
 イラク日本人人質事件で心労の深まる3人の家族に、心ない中傷や嫌がらせが追い打ちをかけている。無言電話や「自業自得」と書かれたファクスなどは13日までで数十件。家族は留守番電話にするなどの対応に追い込まれ、警察は不測の事態に備え実家警備を強化した。「傷ついている人になぜそんなことを」と憤りの声が上がった。
 札幌市の今井紀明さん(18)の自宅は、あまりの嫌がらせ、中傷電話の多さから13日に留守番電話にしてNTTの電話番号案内もやめた。だが、今度は留守電に「死ね」と吹き込んで切ったり、仏具らしい「チーン」という音だけが繰り返し録音されたりした。
 北海道千歳市の高遠菜穂子さん(34)宅。強い調子で発言する弟妹の映像がテレビで流れた後「ふざけるんじゃねえ」などの電話が多数かかり、家の人は寝られなかった。

■人質事件、高遠菜穂子さんの自宅に嫌がらせ電話相次ぐ(朝日新聞)
 北海道千歳市内にある高遠菜穂子さん(34)の実家にはここ数日、東京にいる弟高遠修一さん(33)、妹井上綾子さん(30)らの記者会見発言に対する批判や嫌がらせの電話や手紙が相次ぎ、知人らが電話を取り次ぐなどして対応しているという。

 関係者によると、拘束されたことが報道された日から、「自業自得だ」などとする電話や手紙があり、その後、テレビで弟妹らの記者会見の模様が流れると、すぐに嫌がらせの電話が鳴るという。

 高遠さんの母京子さん(65)は13日午前、自宅前に姿を現し、「菜穂子たちへの多くの支援に感謝しています。ただ、若い娘と息子の記者会見での感情的な発言が誤解を招いているようです。追いつめられた状況の中で声を荒立てることを、そばでいさめることのできないもどかしさを痛感しています。どうか2人の心情をくんでやってください」と声を詰まらせた。

 一方、今井紀明さん(18)の札幌市内に実家にも同様の電話があり、今井さん方では13日から、電話番号を替えた。

 醜い。本当に醜い。「自業自得」と言われ始めている中、怒鳴っている家族たちを見れば、視聴者は「なんだあの態度は!」と反発があろう。その意味で戦略的には誤っていた。
 しかし、家族の苛立ちは、錯そうする情報、政府や小泉首相が何もしていないという誤解からだ。精神的に追い詰められていることを考慮すれば、同情の余地は大いにある。

■何よりも、わざわざ電話番号を調べて、嫌がらせをするバカな暇人の方が不愉快である。このようなバカがいることを日本人として心より恥じる。

■保守派が露骨に家族を非難し始めている。なにゆえ、被害者家族が苦しんでいる時に、追い討ちをかける必要があるのか。(自衛隊派遣した小泉政権への批判に対して)「一致してこの問題に取り組むべき」「憎むべきはテロリスト」と言っていた舌の根の乾かぬうちに、このダブルスタンダードの登場だ。これでは便乗平和主義者らと何ら変わらないではないか。

■「自業自得だ」「見捨てよ」と言うことで、「こりゃぁ人質を取っていても意味がないな」とテロリストに思わせたり、「国家に見捨てられた人質」として同情を引く戦略だったらおもしろいが。


■邦人人質事件 貫きたい自己責任の原則(産経新聞社説)
 日本人三人の人質事件に関し、竹内行夫外務事務次官が十二日の記者会見で自己責任原則の徹底を求めたのは当を得たものといえる。

 外務省から退避勧告が出される中、三人はそれを承知でイラク入りし、事件に巻き込まれてしまった。不幸なことではあるが、第一義的に自分たちの責任だということを忘れてはならない。

 竹内氏は「日本の主権が及ばない所では保護にも限界がある。安全、生命の問題であり、自己責任の原則を改めて考えてほしい」と訴えた。国家と個人を問わず、危機管理の原則は、正確な情報と、冷静さと自制を伴った行動にあることを確認したい。

 自民党内からは法的な拘束力を持たない退避勧告ではなく、渡航を禁止する法的措置を検討すべきだという意見が出ている。現状のままでは同じような事態が繰り返されるという危機感に基づくものだろうが、渡航自由の侵害にならないか、論議を深めるべき課題でもある。

 今回の事件は個人と国家のありようにも問題を投げかけている。

 人質の家族からは「自衛隊は早期撤退をしていただきたい」「三人の人権が大事なのか、国家が先なのか」「人の命と国のメンツ、いずれを優先しているのか、知りたい」など国を批判する言葉が発せられている。

 だが、こうした発言は、国家を国民との対極におき、国民を抑圧する「悪しき権力」と一方的に決め付けていないだろうか。この思考はマスコミや識者の中にも散見される。

 しかし、国家は自国民の生命や財産を守る責務を担い、そのために努力している存在である。日本政府も十分とはいえないだろうが、そうした努力を払っている。

 政府が、テロリストの脅迫には屈せず、自衛隊を撤退させないとの立場を堅持しているのも、国民を守る責務をわきまえているからだ。脅迫に屈すれば日本国民はいたる所でテロリストのターゲットとなり、際限のない譲歩を余儀なくされてしまう。

 テロリズムは社会が騒ぎ、動揺することも狙っている。テロリストには妥協も理解もありえないという鉄則を貫き、日本は脅しが効かない国と思わせることこそが肝要だ。



■IMF専務理事 日本は改革でもっと主張を(毎日新聞)
 国際通貨基金(IMF)の次期専務理事選出が大詰めを迎えている。先月初め、ドイツ大統領選出馬のため、突如辞任したケーラー前専務理事の後任選びだが、今回も従来同様に、欧州諸国によるたらい回しの様相を呈している。

 それでいいのだろうか。

 IMFはアジア通貨・金融危機でその機能に疑問が持たれて以来、改革が求められている。しかし、具体的な動きはほとんどない。自国利益にこだわる最大出資国である米国の意向が、運営に色濃く表れていることも背景にある。

 そうした状況の中、今回の専務理事選出過程では途上国などの間から、公開性や透明性の高い手順を踏むべきだとの声が上がっている。ところが、アジア諸国の一員である日本は、成り行き任せで、明確な主張をしていない。

 アジア危機ぼっ発直後に、日本はこの地域における通貨・金融危機への迅速な対応のためアジア通貨基金(AMF)構想を提案した。米国の反対でうやむやに終わったが、その当時は米国に物申そうという意欲があった。

 日本が国際金融の世界で、応分の役割を果たしていこうというのであれば、先進国間の協調とともに、途上国に目を向けた姿勢を取っていく必要がある。専務理事選出時はそのいい機会なのである。

 いま、米欧がケーラー氏の後任に想定しているのは、フランス出身のルミエール欧州復興開発銀行(EBRD)総裁とラト・スペイン経済相の2人だ。いずれに決まるかは米国の意向次第である。

 IMF専務理事は1946年の設立以来、欧州出身者が占めてきたが、米国の政策に沿う運営が行われてきたのは、そのためでもある。国際政治や通貨政策では米国と対立することが少なくないフランスも、IMFの場では協調的である。歴代8人の専務理事のうち3人がフランス出身で、その期間は31年半に及ぶことと無関係ではあるまい。

 この間、IMFの業務内容は大きく変わってきた。かつての国際収支悪化国に対する出資に応じた融資から、80年代の累積債務問題の顕在化以降、経済構造調整の企画・執行機関になっている。

 通貨危機に直面した国や市場経済に移行しようという国が、規律ある国内経済運営を行わなければならないことは間違いない。しかし、それが過度に厳しいものであれば、経済回復そのものを阻害しかねない。IMFは緊急時に機能しなければならない機関であり、まずは、国の生命維持を図ることを要請されているのだ。

 世界銀行はアジア危機の経験から、軌道修正を探ってきた。IMF改革を本物にするためには、世銀や地域開発金融機関との任務分担を明確にするとともに、危機に陥った国が使いやすい仕組みを構築することだ。

 こうしたことに日本が貢献していけば、日本から専務理事をという声も上がるであろう。そのためにも、日本としての改革案を提示するなどの行動が望まれる。

 アジアとロシアの通貨危機後にはIMF改革論議がなされていたが、最近はどこへやら。喉元過ぎれば熱さ忘れる…ってことだろうか。


■バブリーな中東専門家
酒井啓子(アジア経済研究所参事)
大野元裕(中東調査会・元イラク大使館員)
高橋和夫(放送大学助教授)


■小泉首相、菅代表が党首討論 今国会2回目(産経新聞)
 小泉純一郎首相と民主党の菅直人代表は14日、邦人人質事件などイラク情勢緊迫の中、今国会2回目の党首討論に臨んだ。人質解放の難航で首相答弁は歯切れが悪く、菅氏も年金問題では「やるやる詐欺だ」とばっさり切り捨てたが、人質事件では犯行グループの要求に沿った形での自衛隊撤退論は口にできず苦しい追及となった。

 菅氏は、米国に対しファルージャでの地元武装勢力への攻撃を自制するよう要求すべきだと主張。首相は「人質の問題とも絡んでいる。日本が公開で言うべきことと、水面下で働きかけていることがある。慎重な物言いをしている」と言葉を濁した。人質の捜索、救出などを米国に頼らざるを得ないという微妙な立場にあることをうかがわせた。

なんだ、ヤルヤル詐欺って?「やるやる」と言っておきながら、やらない詐欺行為を指すようだが…。報道ステーションで古館伊知郎に「言葉遊びをしてる場合か。それは私の仕事。」ってな趣旨の発言をされていた。しかも「オレオレ詐欺」はちょっと古いし。


■NEWS23>筑紫哲也>多事争論13日「自国民」
 実際にはその状況は刻々と変化しているようでありますが、それにテロリズムがこれだけ世界に広がっている時代に、安全な所というのは、完全に危なくない所というのは存在いたしません。例えば子どもをハワイにやる時に、ハワイが危なくないと考えるのかどうか、あるいは子どもが渋谷に出かけていく時に、それじゃそれをどうするのかと考えれば、これは無限に広がる話であります。

 筑紫おじいちゃんが無茶苦茶言っている。イラクにハワイや渋谷を持ち出しますか。やや茫然とさせられる。「ハワイや渋谷で事故にあっても、『自己責任だ』と言うつもり?」とぼやいていらっしゃるのかな。


1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

【アンマン=横田一成】
カタールの衛星テレビアルジャズィーラは15日夕(日本時間午後夜)、
「サラヤ・アルムジャヒディーン(聖戦士の部隊)」を名乗るイスラム武装集団に拘束されていた邦人3人が解放されたと報じた。

拘束されていたのは非政府組織(NGO)代表の今井紀明さん(18)=札幌市西区宮の沢2条2ノ3ノ24、
フォトジャーナリストの郡山総一郎さん(32)=東京都杉並区高円寺南5ノ37ノ19―101、
ボランティアの高遠菜穂子さん(34)=北海道千歳市上長都1058=の3人とみられる。

3人はイラク・イスラム聖職者協会の保護の下にあり、健康状態は良好と言う。
解放場所は首都バグダッド。