パウエル米国務長官は12日、毎日新聞など日本の報道機関との会見で、憲法9条改正が、日本が国連安全保障理事会の常任理事国に入るための重要な要素になるとの認識を示した。アーミテージ国務副長官が7月下旬に中川秀直・自民党国会対策委員長に同趣旨の発言をしているが、米政府高官が公の会見で、常任理事国入りに絡めて9条改正について考慮を促すのは極めて異例だ。ブッシュ政権が日本国内世論の反応を見ながら、改憲圧力を徐々に強めようとしていることが鮮明になった。
パウエル長官は会見で「日本が世界の舞台で十分な役割を果たし、安保理の常任メンバーとしての義務を負うのなら、憲法9条はそれに照らして吟味されなければならないだろう」と述べた。
常任理事国となって国際社会で相応の役割を果たしたければ、紛争解決などのために軍事力を展開しなければならない場面も出てくるだろうが、現行の憲法9条のままで可能なのか、9条が制約にならないか、改正を考えねばならないのではないか――という意味だ。「内政干渉」批判を浴びかねないことを考慮して、改憲という言葉は直接、使っていないが、「吟味」の表現に、改憲への強い期待感が込められている。
そこには、日本が軍事的な国際貢献をできるようにし、日米同盟をさらに強化するとともに、常任理事国に親米国家・日本を加えることで米国の国連外交を有利に展開したいとの米政府の本音が反映されている。
先のアーミテージ副長官の同趣旨の発言はその後、日本国内の反発を呼び、約1週間後に岡田克也民主党代表との会談で、副長官自ら発言を撤回する場面もあった。にもかかわらずパウエル長官が再びこうした見解を表明したのは、米政府が日本国内のある程度の反発を織り込み、時に鎮静化をはかりながらも、憲法9条改正を積極的に後押ししようとの計算を働かせているためと見られる。
「憲法を押し付けられた」と怒っていた人が、お尻を叩かれ改憲活動に励んでいるのは、何とも皮肉だ。
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