耳を疑う球団幹部の発言(赤旗)
選手やファンを置き去りにして進められてきた近鉄、オリックスの合併問題。6月13日に発表された後、1リーグ制の思惑をはらみながら、さまざまな動きが繰り広げられてきました。
労働組合・日本プロ野球選手会(古田敦也会長)は10日に開いた臨時大会で、「あらゆる手段を尽くしても来季からの合併が強行されようとした場合、最終手段としてストライキを行う場合がありうる」ことを決めました。
最大の当事者であるはずの選手を論議の場から締め出して“暴走”してきた合併劇。多くのファンは、こうした球団側のやり方に怒るとともに、選手会労組の方針に共感し、支持しています。
こうした選手会労組の動きが注目されるなか、思わずわが耳を疑うような発言が球団幹部から飛び出しました。
「2軍の選手には何らかの保護が必要だが(年俸)1000万円を超える選手に労働者性があるのか。…歌手も役者もみな個人事業主。野球の選手会の任意団体が労働組合なのか疑義を感じる」(13日付「スポニチ」)
こう言い放ったのは、横浜の峰岸球団社長です。TBS時代の労政部長を担当した経験からの発言といいます。
選手会は、1985年11月、東京都労働委員会から労働組合と正式に認定されており、この問題での議論の余地はありません。
その7年前、労組認定を引き出す上で、決定的な役割を果たしたといえる国会質問があったことは、多くの関係者の記憶にとどめておく必要があります。
78年3月2日の参議院法務委員会。日本共産党の内藤功議員(当時)の質問です。当時、ドラフト制度が人権の面から大きな社会問題となり、国会でも取り上げられました。内藤議員は、プロ野球選手の権利を守る立場から、選手を「労働者として扱うのか」という問題を提起しました。
内藤議員は、憲法や労働組合法、労働基準法を引用し、労働者の要素を(1)自分の労働力を提供する(2)使用者の使用従属下、指揮命令下に入る(3)その労働力の対償として収入を得る―の3つあげました。同時に、プロ野球選手と似た立場にある放送会社の管弦楽団員が、組合をつくり労働条件で交渉してもいいという最高裁判決(76年)も示し、政府の見解を求めました。
政府側はこれを事実上認め、「プロ野球選手は労働者である」ことが公的に決着した歴史的瞬間となったのです。
いまも弁護士として第一線で活躍している内藤さん。今回の発言にたいしては「選手が労働者であることは20年以上前に決着しているきわめて明りょうな問題。それを否定する発言は驚きますね」と、あきれた様子。今回の合併問題も「選手やファンあってのプロ野球という原点を忘れています。ファンの一人として、選手会労組には頑張ってほしい」とエールを送っています。
2年前、プロ野球労組がプロ野球機構側の不誠実な交渉態度に対し、不当労働行為にあたると救済を申し立てたときも、機構側は選手は労働者か、と疑問を投げかけました。決着ずみの問題を事あるごとに蒸し返す―こうした発言の真意がどこにあるかは別にしても、歴史の歯車を押し戻すことは許されることではありません。
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