朝日新聞東京本社の記者が、取材中のやりとりを取材相手との約束に反して録音し、別の取材先に渡していたことが明らかになった。朝日新聞社は5日、こうした行為は取材相手との信頼関係を損ね、「取材源の秘匿」の原則に触れるとして、録音記録を渡した記者を退社処分にするとともに、編集幹部の管理監督責任を問い、減俸・減給処分にした。
退社処分になったのは社会部記者(46)。取材にかかわった生活部記者(39)を減給処分とした。君和田正夫・専務編集担当が役員報酬減俸、東京本社の吉田慎一・取締役編集局長、横井正彦社会部長、坂本弘子生活部長の計3人が減給。
社内調査によると、社会部記者と生活部記者の2人は4月、私立医科大の補助金流用問題で関係者を取材した。この際、「録音しない」と約束しながら、これに反して社会部記者がやりとりを録音し、後日、この関係者に批判的な別の取材先から求められ、MDに複製して渡した。
6月上旬ごろ、MDとほぼ一致する内容のCD−ROMが怪文書とともに複数の関係者に届き、7月中旬、録音された本人から朝日新聞社に抗議があった。記者からMDを受け取った取材先は「盗まれたかもしれない」と話しており、録音などが出回った経緯については判明していない。
社会部記者は「事実関係を確認するためにMDを渡した」と話している。
朝日新聞社は5日、録音した取材相手に文書で謝罪した。
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〈君和田正夫・朝日新聞社専務編集担当の話〉朝日新聞社は「取材先との信頼関係」「取材源の秘匿」について、最重要の倫理と位置づけてきました。今回、取材の録音記録をそのまま流すという、あってはならないことが起き、極めて重く受け止めています。関係者におわびするとともに、改めて取材倫理を社内に徹底します。
退社処分は懲戒解雇に次ぐ重い処分だが、退職金は支払われる…らしい。
■朝日新聞社:取材源漏らし、記者を退社処分(毎日新聞)
▼大石泰彦・東洋大教授(メディア倫理)の話
朝日新聞社は二つの過ちを犯した。一つは、記者が取材先との信義に反する行為をしただけでなく、観察者であるべきジャーナリストが取材先の不利益を生むような状況を作ってしまったこと。もう一つは、企業の不祥事など不正を追及する立場にある報道機関は一般企業よりも高い倫理を求められるにもかかわらず、社内で起きた問題を自主的に発表しなかった点だ。これでは、不祥事を起こした取材先の企業から「朝日も不祥事を隠そうとしたではないか」と批判されてもやむをえない。
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